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緊張で心臓が今にも飛び出そうだったけれど、幸いゆんぎはピクリとすら動く気配がなかった。
「...じゃあね」
囁くまでもいかない音量でそう呟いてから背を向けてドアへ向かおうと足を踏み出したその瞬間だった。
右手首を突然グッと引っ張られて、ふらっとよろけた私はそのまま床に座り込んでしまった。
掴まれた手に視線を移せばゆんぎの微睡んだ目が私をじっと見つめていて、途端に鼓動が早くなる。
「...ごめん。起こしたね」
『...さっきの』
「え?」
『....さっきの、なに』
「さっきのって」
『...キス。したろ、ここに』
「...なに、言って『起きてた。その前から』
「え...」
『...あれ、どういう意味』
それらしい理由が何一つ浮かばない程とっくに頭は麻痺していて、気を緩めたら今にも色々な物が溢れ出そうだった。
「...なんでもない」
『はあ...なんでもない訳ねえだろ。つくならもう少しまともな嘘つけよ』
「...ごめん」
『謝られてもわかんねえ』
もう、限界だった。
「...っ、ごめん」
グッと握られていた手の力が一瞬緩んだ隙にその手を払って、床に置いていた鞄を雑に掴んでから玄関へ走った。
背中からゆんぎが私を呼び止める声が幾つも聞こえたけれど、1度も後ろは振り向けなかった。
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秋良(プロフ) - お返事いただき感謝です。250字では表せない位素敵な作品で他の作品も凄く大好きです^^季節の変わり目ですのでお身体ご自愛くださいね。 (2021年3月6日 14時) (レス) id: 182bc41aa4 (このIDを非表示/違反報告)
天(プロフ) - 秋良さん» 秋良さん、こちらこそコメントありがとうございます!気長にお待ちいただけたら嬉しいです(*´`*) (2021年3月6日 12時) (レス) id: 6f2734bf2f (このIDを非表示/違反報告)
秋良(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます。次回作も楽しみにしてます。 (2021年3月6日 1時) (レス) id: 182bc41aa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天 | 作者ホームページ:https://twitter.com/_sora_way
作成日時:2021年2月23日 21時