理系ちゃんの可能性

私の姉と、愛犬と、 ページ10

「ココって本当にAに懐いてるのね。」


私がココと戯れていると、お姉ちゃんがそういうのでぎょっとした。


我が家で買っているチワワのココ。


お姉ちゃんが帰ってきたら私の腕をすり抜けて、お姉ちゃんの所に行ってしまうのに。


「え...お姉ちゃん。ココが一番好きなのお姉ちゃんだと思うよ。」



珍しく、二人でココの散歩に出かけることにした。


お姉ちゃんは大学で、私は高校で忙しいから、なかなか話す時間が無い。


その腹いせに...っていうのも変だけど、一緒に散歩に来てもらうことにした。


「お姉ちゃん最近大学はどう？」


お姉ちゃんは東大文科一類、今は法学部。


ちなみに東大文科一類というと、日本の文系最難関学部だ。


そんなところに受かっちゃったのは、やっぱりお姉ちゃんの頭がいいからだろう。


「楽しいけど...勉強に着いていくのが大変かな？」


東大生が困ること、
入ってからの勉強が大変。


あれは本当だったんだ。


「勉強が大変なのに来させてごめん...。」


自分の行動の愚かさを感じて落ち込む。


お姉ちゃんはゼミで忙しいのに。


でも、お姉ちゃんはふふ、って笑った。


「いいよ、私も散歩は好きだから。」


そう言ってお姉ちゃんは、今まで何人も魅了して来た笑顔を向ける。


...お姉ちゃんに変な虫がよってこないように、しっかり見とかないと。


最近は何やらテレビ局まで、お姉ちゃんをアナウンサーにしようとしてるらしい。


「逆に、Aはどうなの？高校。」


「楽しいよ。」


でも、私には高校以上に楽しいものがある。


言うまでもなくそれはQuizKnock。


QuizKnockの方々と話していると、高校生ってちっぽけだなぁと思う。


「部活はどこに入るつもり？」


部活かぁ...。


考えてなかった。


お姉ちゃんは軽音楽部に入って、その歌のうまさと、容姿に惹かれた男子は多々。


私は別に歌がうまいわけでも無い。


運動は出来る方ではあるけれど、そんなに思い入れは無い。


「やっぱり数学研究部かな。」


ポツリと呟いた私に、お姉ちゃんはえぇ？と声をあげる。


「数学って難しいのに、よくずっとやっていられるよね。」


お姉ちゃんが心底驚いた顔をしているけど、私にしたら、国語の方が難しいんだって！


私がムッとした顔を向けたのに気付いたお姉ちゃんは笑った。


口に手を添える上品な笑い方。




...私も大人ぶって、お姉ちゃんの真似をした。

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