早押しクイズとその結末 ページ16
「差が 2 である二つの素数の組を構「双子素数」
「...正解。」
手も足も出ないとはこのことだ。
水上さんは悠々とボタンを押しては、正解していく。
問題の答えは分かる。
...分かるのに、早押しボタンを押す指が動かない。
私の目の前には心配そうに成り行きを見守る伊沢さんがいる。
せめて一矢報えることが出来れば良いのに。
ギュッと唇を噛み締めると、血の味がした。
「問題。」
「位相空間の性質やその上に定義される構造を研究対象とする位相幾何学の一分野である概念は何か。」
初めて伊沢さんが最後まで問題文を読んだ。
隣を見ると、考え込むような水上さんがいた。
もしかして水上さんは分からないんじゃないか?
このチャンスを逃すまい、と私はボタンに飛びつく。
ピンポン、と軽快な音がなった。
伊沢さんと水上さんの視線を受けながら、若干前のめりになって言う。
「位相空間論。」
ちらり、と伊沢さんを見ると、伊沢さんは誇らしげに笑んでいた。
「正解!」
伊沢さんは私に向かって親指をたてた。
胸には、あの水上さんから取ったのだという誇らしい気持ちでいっぱいだった。
「位相空間とか、構造とか、研究対象とか、全て数学用語なのに、なんで分かるの?」
心底不思議そうに聞く伊沢さん。
「数学には知識も必要ですから...。」
自分でいうのは照れくさい気がして、言葉が尻すぼみになってしまう。
自慢してるみたいなんだもの。
「じゃあAちゃんが水上から一点をもぎ取ったから、終了!」
伊沢さんは拍手をして、スマホをポケットから取り出すと、そさくさと隣の部屋に入ってしまった。
...忙しいんだろう。
「Aさん、クイズ楽しかった?」
水上さんが私にそう問う。
「はい!」
水上さんは満足気に微笑んだ。
クイズは点を取ったらその楽しさに気付く。
お姉ちゃんの言葉は本当だった。
*
水上さんがオフィスを去って、私はオフィスのソファに座った。
ふと1枚の紙がテーブルに置かれているのを見た。
...伊沢さんが問題の時に持っていた紙だ。
他にどんな問題があったのだろう、とめくると一番上にはこう書かれていた。
「Aちゃんをクイズ沼に引き込む計画」
「水上から一点を取ればAちゃんはクイズの虜になる。」
そう書かれていた。
...してやられた。
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そら(プロフ) - おーちゃんさん» ありがとうございます!最近スランプ気味?で行き詰まってます...。上手く文章に起こせなくて...。ゆっくり更新していこうと思います! (2019年10月26日 9時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
おーちゃん - めっちゃ好きです。もう一つのやつも好きです。素晴らしすぎてすごいです。(語彙力崩壊) (2019年10月17日 20時) (レス) id: 23068de1a1 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - え!?よろしいんですか!?ぜひお願いします! (2019年9月11日 18時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
まるり - あの!イメージ画を描かせていただけませんか? (2019年9月10日 21時) (レス) id: b4df52275d (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - まるりさん» コメントありがとうございます!文才!?嬉しいです!ありがとうございます! (2019年9月3日 5時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2019年8月30日 18時