Sweet × love…!

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「こんなとこにいた！」



息を切らして駆け寄ってくるその姿は
さっきグラウンドで名前を呼ばれていた
その人で間違いなかった。



「なんで…？だってさっき、名前」


「断ってきた」


「え？」


「それでAのこと壇上に上げて
　この人が好きですって言おうとしたのに
　全然見当たらないし」



窓際からグラウンドを覗き込んで
あんな感じで見えんだね、って
振り返るたいちゃん。



…いま、何て言った？

空耳じゃ、なかった？



「なぁA、
　ここで写真撮ろうって言ってたじゃん」


「…うん」


「今、撮らない？」



そう言ってポケットに手を入れる。



「…あ、携帯ないわ。
　Aの貸して？」



スマホを手渡すと
教室を見渡して
よし、と頷いた。



「ほら、来てよ。みんなステージ見てるし
　一瞬だけなら電気つけても大丈夫だよね」



教室の電気をつけると

クラスで一番人気だった
テーマパークのお城をモチーフにしたダンボール。



ぎゅっと肩を寄せられて
たいちゃんの手にあるスマホの画面を見ると
インカメに映る自分たちが
密着しているから、ドキドキする。



"カシャ…"



「はい、これでオッケー。あとで送ってよ？」


「う、うん」


「それとさ。
　さっきさりげなく言ったつもりなんだけど…
　ちゃんと言うね」



抱いていた私の肩を離すと
お城の前で向かい合う形になった。



「俺、Aのことが好き。
　たぶん小さい頃から、ずっと」



いつもと違う
不安そうなたいちゃんの瞳。

それは
小学生の時、引っ越す前に
様子がおかしかった私を心配してくれた
たいちゃんのままだった。



「……たいちゃん」



今度は自然と、私の口からこぼれ落ちた。



"…ーーーおい、誰かいるのか？"



廊下から声が聞こえたと思ったら
教室の入り口に先生がやって来た。



「お前ら何してんだ。
　早くグラウンドに戻れ」



タイミング悪くそう言われてしまい
グラウンドに戻ることになって。

先生も空気読んでくれたらいいのに。



グラウンドに着くと
サッカー部の人がたいちゃんを見つけて
どこかへ引っ張って行ってしまった。

私も意外とすぐに夏美に見つかって
そのままたいちゃんとはぐれちゃったし。



結局何も言えないまま

文化祭が終わってしまった。



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