蟠りは ページ40
***
パトカーが来ると、静かな路地も一度は騒然となったが、犯人が署に連行されると、周りの野次馬も去っていき、また静寂を取り戻す。
一気に気が抜けた私は、身体に力が入らず、立ち上がろうとするが、ガクン……っと膝が崩れてしまう。
「あ……」
すかさず腰に腕を回し支える実弥は
真剣な顔をして静かに言った。
「……抱くぞ……」
どっくん……
「……え?」
ふわ……っと実弥の優しい匂いに包まれ
視界が反転すると、姫抱きにされる。
一歩一歩踏み出し身体が上下に揺れると
実弥の息づかいが聞こえ、
それが心地よくも……
辛く感じた。
私って、迷惑ばかりかけてる……
気遣い出来ない嫁。
本当にその通りだ。
「…………ごめんね……」
さっきまでの恐怖と安堵で、泣きたくないのに勝手に涙が溢れ止まらない。
実弥は、何も言わずに何度も何度も頭を撫でてくれた。
そして、はあぁ……っと、深いため息をつき、私に言う。
「…間に合って良かったァ……お前になんかあったら、あいつ……確実に刻んでたァ。」
「お前が……無事で良かった」
そういうと、頭を胸まで引き寄せぎゅっ……と
抱きしめられる。
でも……私はいつものように……実弥の胸に飛び込むことが出来なかった。
「……私がいけなかった。私……いつも勝手な事ばかりして、実弥を振り回して。……理解がない、気遣い出来ない嫁だと、実弥が思ってもしかたないよね……」
驚く表情で私をみつめ、言った。
「……は?俺は何とも思ってねぇよ」
そんな事言ってくれるけど、小林さんに
愚痴ってたんだよね?だから……彼女は……
カナエさんの方がお似合いだと思ったのだろう。
「私のせいで、実弥に色々悩ませてしまってごめんなさい……。」
「だから……俺は何とも思ってねェって」
「……実弥は、本当に優しいね?……あ、本署に行かなきゃいけないんだよね?連れてってくれる?
話は……またあとでしよう?」
私は、実弥にとっていい奥さんにはなれないから。これ以上、私の感情で振り回したくない。
実弥の眉がぴくりとする。
「お前……余計な事考えてンだろォ……」
「……え?何が?」
「お前が何を思ってンのか知らねェが…
俺は……」
プルルル…
「わりィ……電話だ。……はい不死川。直ぐ向かいます」
本署からの連絡がはいり、車で向かった。
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えのき(プロフ) - れもんさん» コメントありがとうございます!褒めてくださりありがとうございます!お気に入り登録もありがとうございます!楽しんでもらえたようで良かったです(*^^*) (2021年9月26日 7時) (レス) id: 9c3da7f4d0 (このIDを非表示/違反報告)
れもん - こんばんは!読みだしたら止まらなくなって、すいすいと全部読めました!とっても面白いです!続編も楽しみにしてます!お気に入りを666から667にしてしまった罪悪感…。…でも、お気に入りにしない選択肢はなかった!ウンウン(/・ω・)/ (2021年9月25日 20時) (レス) id: 5102ae8dc8 (このIDを非表示/違反報告)
えのき(プロフ) - ユイぱさん» 続編へ移行します。準備が整いましたら公開しますね! (2021年9月23日 17時) (レス) id: 9c3da7f4d0 (このIDを非表示/違反報告)
えのき(プロフ) - 柚葉さん» 小林さん……こわいよね? (2021年9月23日 16時) (レス) id: 9c3da7f4d0 (このIDを非表示/違反報告)
ユイぱ - 続編できるんですか?楽しみです! (2021年9月23日 16時) (レス) id: 21c5274ef7 (このIDを非表示/違反報告)
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