愛の在り方 【苺】

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彼女がご飯を食べない。



そんなおかしな事態にも慣れてしまって、気づいたらあれから1年経過していた


俺がリーダーとなって勧めてきたAIロボットプロジェクトも今になり実を結び、着々と自宅での利用者を増やしている。



今日も過去一格段に新しい利用者が増えた。
アプリでの広告が効いたみたいだ。



ここ最近絶好調で、前はよく仕事で鬱になっていたのが嘘みたいだ。



彼女が隣にいないと眠れなかった赤ちゃんのような俺はもういない。


1人でもぐっすり眠れるようになったのは、仕事が成功して彼女と結婚出来る未来が見えたからかもしれない





「A、聞いて！」


仕事の成果を君に話そうと上機嫌で扉を開けた瞬間、背筋が凍った。




『なーく…っ』



体調を崩した君は初めてかもしれない。
恐怖に嫌な感覚の鳥肌が全身を這う。


「ベッドに横になろう」



冷静にならなきゃ。
そう思い君に触れようとしたその時だった。



『触んな！』


バチン！



酷く拒絶された。
人間じゃないような瞳で俺を睨む彼女。



「え？」




『ななもりはどうして勝手に幸せになっちゃったの？』



"苦痛に耐えてる姿がよく似合っていたのに"




急な呼び捨て。



「俺は君と過ごす時間が1番の幸せだよ？Aにいつも元気もらってるし」



『そんなの当たり前じゃん。私いてこそのななもりなんだから』




"貴方の苦痛は私の唯一の栄養だった"




『ななもりが不幸に苛まれる夢を食べんのが私の唯一のご馳走だったのに！』




いつしか仕事場の同僚に聞いた、夢喰い女。
くだらない御伽噺だと思っていた。




『私、大好きな人のせいで死んじゃう』



君の裏の言葉が聞こえた気がした。


そしてようやく、夢喰いの彼女はその場に静かに崩れ落ちた。





「は、はは、なんだよそれ…」


動かなくなったAを必死に揺すった後に
俺はとあることに気づく。



なんだ。この女を生かすも殺すも俺次第じゃん。






その日の夜、迷うことなく八つ当たりする為だけに自分の管理下にあったAIを違法に起動させた。




それから俺は


利用手続きをしてくれた大切な人お客様の家で働くAIのスイッチを乱雑に切った。




「あはは！俺、今凄く不幸だよ、苦しいよ！」




ほら、A

俺から君に、ご馳走だよ。
沢山食べておくれ。



すると彼女は待ってました、と言わんばかりに
ゆっくりと起き上がって優しく微笑んだ。



なーくん、だいすき。




恋は、毒物だ。

終焉 ﾊｼﾞﾏﾘ 【黄】→←苦痛 ｴｲﾖｳ 【紫】

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