誰 か さ ん 。 【黄】

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人間とは、不思議なものだ。


あれだけ私の日常を彷徨い続けた"誰かさん"は、
気付いたらいなくなっていた。


いや、いなくなったのではない
見えなくなった(・・・・・・・)だけ。




「A」


私の名前を、愛おしそうに呼んでくれる人が、
今の私にはいる。




だから、大丈夫。
私はあの恋をして、強くなって、生きているんだ









そう、思っていたのに。
そうなるはずだったのに。




「……A？」




『え？』




どうして、私



"誰かさん"が見えている(・・・・・)の＿＿＿＿＿？






バニラエッセンス。


それは、とても魅力的なものだ。


キラキラした、まるで魔法のような小瓶に詰められたそれは、甘い香りを放って、人間を誘惑する。



誘われるように、私は顔を上げる。



しかし、私は結末を知っている。
知っているのに



『…苦い』




その液体は、口に含むと実際、苦いのだ。
見た目と相反して。




「A！！！」



私の心は、正直だ。
その苦さにすら、何かを見出そうとしている。



これは、何かの間違いなのではないか。
甘さの裏の、本心にはなにか意味があると。



否、そう思いたいだけなのに。





『……誰かさん(るぅとくん)、久しぶり』




私は、屑だ。


小瓶が、小さく砕けた。


それはまるで、星屑のように、悔しいほど美しかった。

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