誰 か さ ん 。 【黄】

・ ページ6

・


夜は、割と積極的な方だった。
いや、積極的なフリをしていた。


私は、実はちょっぴり寂しがり屋で、
自分を求めてくれていると思うと断れないタイプ






でも、私の全てを曝け出すには割に合わない
心地良さが、私は少しだけ苦手だった。





まるで、獣のような愛が。






長女として生きてきたせいだろうか
家族に『お姉ちゃんなんだから』と言われ
本来私に注がれるはずの愛も、妹に譲ってきたせいか。





私は甘え方を知らなかった






"A先輩に1ヶ月会ってないもん、そりゃ溜まりますよ"



その日の私は、女の子の日が終わったばかりだった。




ほんとうは、したくない


ほんとうは、断ってしまいたい



でも



私の答えはいつだってひとつだった



誰かさん が いつ私を求めなくなるか分からない
断ったらもう求めてくれないかもしれない
求めてくれているうちに応えていた方が、いいのではないか




『私も、貴方が欲しかったよ』





完全に自分への自己評価の低さがそう行動させた。



こんな私でも、いいんだ



その瞬間だけ、私の心を温めた。
その瞬間だけ、私は女優になれる。




"かわいいよ"

もっと言って。

"お願いだから寝ないでよ"

もっと求めて。

"＿＿＿＿＿＿＿"

あ、私 壊れそう。





身体の触れ合い無しにでも



私 に 愛 を 伝 え て よ







「A」


『ん？』


「今日はやめようか」


『え、どうして』


「なんか、無理してる顔してる」



ほんとは女の子の日、終わったばかりでしんどいんでしょ




なんで なんで なんで




『なんで、わかるの』


「そりゃAの彼氏だもんな」



当たり前のように、


当たり前じゃないのに、


何言ってんだろ私の彼氏。


上から降ってくる優しいキスの雨
私が求めていたのは、本当に欲しかったのはこれかもしれない





『...ありがとう』






私の中だけに惚れてるんじゃない
私の全てに惚れてるんだと




そう、思いたかったのかもしれない







"誰かさん"は随分と私を寂しい女にしてくれたわね。



あなたは私のどっち(・・・)に惚れていた？




なんて、もう何年も前の男に聞いたって、仕方ないよね。




教えてよ、誰かさん


私のどこが、どれくらい、好きだったかを

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す