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君に抱く感情を、一言単純に "恋" と呼ぶには随分浅はかであると僕は思う。




『あ〜そっか、ころんはお子ちゃまだから好きな子なんて居るわけないよね!』





僕が返事に困っているのを察してなのかAはベンチから勢いよく立ち上がり、僕を高らかに指さして笑った。





そんな君は、憎いほど輝いている。








公園の隅っこに誰かの忘れ物であろうバスケットボールが転がっていた。





それはいつになく寂しく、夕日に照らされていた。



僕はそれをなるべく優しく拾い上げた。




何でかは分からない。







1人誰かに忘れられて行き場もなく佇むボールにでも同情したのだろうか。





────無理もない。





ついこの間教師になる為の大切なチケットを手に入れたばかりなのに、自分がこのバスケットボールのように何処かに取り残され彷徨っていることを完全に否定できなかった。







このボールが、ゴールに入ったら…







この気持ちを全部、Aに伝えても、いいのかな。






軽い気持ちで投げたボールはリングに当たって跳ね返る。



ボールは再び楽しさを覚えたかのように生き生きと地面に打ち付けられては浮き上がるのを繰り返しながら弾む。






『へったくそ〜』








「うるせぇ!そういうお前は出来んのかよ」






不服な感情を前面に出して僕はAの顔を見る。






『…できるよ?』







────あ、まただ。







Aの表情を見ると時が止まったかのように、




まるで、絵画の世界を覗いているかのように空間が時空が狂う。






気づいた時にはボールはシュパッと心地よい音を立てて地面に垂直落下する。









『ほらね。ころんと違って私は運動できるから』









大人ぶって染めた茶髪がなんだか不格好に見えた。









時間も時間だったから僕らは公園を後にした。






Aは冷えきった缶コーヒーをひたすら握って手を温めようとしている。






もし、僕が彼氏だったら、ここで手を優しく握ってやることが出来たのだろうか。






いや、出来ないだろうな。









僕と君の実家の見える交差点に辿り着いた。




学生時代、馬鹿みたいに長話してきた場所。


2人が、離れ離れになる場所…。







カァ、とカラスが一声切なそうに鳴いた。




あぁ、お前もひとりぼっちか。

僕とお揃いだね。






たった一つの存在に苛まれているのは僕を虜にしたのが





"あなただから"

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作品ジャンル:恋愛
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです!私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです!\(^-^)/ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです! (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました! (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですw人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年10月3日 20時

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