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晴れ晴れしい朝だった。
2人の男女が愛で結ばれるにはとても
相応しい日である。
がやがや。
騒がしい。
タキシード姿の男を目で追い僕は1人会場を彷徨う。
過去の友人も沢山来ていて、
ちょっとだけ…楽しかった。
「A、遂に結婚式してまったなぁ」
「旦那さんイケメンすぎる」
一通り式が終わってなれないお食事を囲みながらそんな会話をする。
いつの間にかキャンドルが灯され、炎がゆらゆらと揺れた。
真っ白い純白のドレスに身を包んだ彼女は世界一美しくて、世界一幸せそうで、
世 界 一 僕 か ら の 距 離 が 遠 か っ た 。
新郎新婦がお色直しをすると声が聞こえて僕は慌てて立ち上がる。
「ころん?」
友人の声も無視して、ただ僕は──────。
「Aっ」
『きゃ、ころっ…?』
新郎が彼女の隣に唯一いない時間。
担当の女性が立ち去ったのを見て僕はなりふり構わず
staff only の扉を開けた。
──────目を、疑った。
先程の純白なドレスとは打って変わって、君によく似合う女の子らしい桃色のレースに身を包んでいる彼女。
よく似合っていた。
だからこそ僕は辛かった。
多分、旦那さんの雰囲気に合った色をしていたからだと思う。
僕は、そっとそんな君に近寄った。
「…ちょっとだけ、我慢して?」
きゅ。
正面から思いっきり抱きついた。
『え、ころん?まって…』
弱々しい抵抗なんて効きやしない。
寧ろ僕の力は強まるばかりだ。
「僕、Aのことが好き」
顔なんて見ないから。
僕のせいで困ってるAの顔なんて見ないんだから。
僕の背中に腕を回してくれない一方的な抱きしめ方が
その事実を物語っている。
彼女の首元に光るダイヤモンドのネックレス、
小ぶりだけど一番星のように輝かしい指輪。
そして、所々にチラついて見える赤い華──────
分かってる。分かってた。
その一つ一つが、旦那さんが彼女に向ける独占欲であり、僕への牽制であることなんて。
「はは、ごめん。こんなこと今更言っても遅いのに」
名残惜しいが自分の図々しさを恥じ彼女から身を引こうとした。
…はずだった。
僕は再び何かに引き寄せられるように君と肌を重ねた。
不思議な気持ちに陥れてしまうのは
"あなただけなの"
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです!私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです!\(^-^)/ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです! (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました! (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですw人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年10月3日 20時