あなただから。【青】

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小さな交差点に大きな感情が錯誤する。


あぁ。もう少し僕が強かったら。



後悔したって遅いのに溢れる想いは過去の自分への腹立たしさのみだ。




『…っ、そろそろ泣き止んでよころんのばか』



素直に、祝ってあげられなくてごめん。





｢お前もまだ泣いてるアホ｣





僕はきめ細やかな整った美しい彼女の頬に手を伸ばした。




するり、と流れるように触れて




君の宝石のような涙を丁寧に拭った。





『ばか！ころんらしくないっ』





照れたような素振り。
それなのに僕を優しく拒絶するのはどうしてなの？




…結婚する女としてのケジメなの？





"幼馴染" という特別な立場は簡単に崩れてしまうの？






"その男" が全て君を埋めつくしてしまうの？





「…っ！」





多分僕は、世界一大馬鹿者なんだと思う。






『ころっ…！？』







本当に、一瞬だった。




後ろからただただ、強くAを抱きしめた。





結婚してしまったら今度こそ彼女は名も知らぬ男のモノになっちゃうでしょ？






だから、今だけ…。







｢さっき、Aは僕に好きな人いないの？って聞いたよね｣









｢実はお前は学生時代にも、同じ質問してた｣






『え』



異様なほど冷たい風が僕の身体中をちくりと刺した。









｢僕ね、すきなひと…いるよ｣








泣いた顔で、みっともない。



だけどせめて笑って言いたくて。





もうお前も恋愛の一つや二つ、経験しているわけだから鈍感じゃないでしょ？




君の染めた髪を優しく救ってキスを落とす…






はずだった。





僕は君の表情を見て知った。






Aは多分今、僕が遠回しに告白したことに気づいていない。






代わりに、背後から僕を睨む男が1人、現れる。







僕の知らない、君の味がした。









｢…Aは俺のものなんで｣







彼女の結婚相手だと思われる男が全力で彼女を僕から引き離して低い声で言った。







良かったな、A。

君はちゃんと愛されている。






僕が君を愛するよりも、絶対幸せになれる…よ…





夕日が僕らの影を長く長く伸ばした。





酷く寂しい夕方だった。







『ころんまたねっ！次会うときは結婚式場で！』









ご丁寧に招待状送るね なんて微笑まれては僕はつい苦笑してしまう。









すきだよ、だいすきだよ、大好きだったよ



こんなにも僕を女々しくさせるのは





"あなただけだから"

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