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『…それは、そうで…そうだけど、』
手に持っていたグラスをテーブルの上に置き、でも、と声を出す。
『私が望む日常には、あの二人がいないと駄目。…いるかどうかもわからなくても、私が“ここ”で生きていく意味は、もう一度二人に会うこと。
……じゃないと、心、折れそう』
最後に零れてしまった言葉は届いていたのだろうか、小さくそうか、と呟いた彼は、大きく、温かい手を私の頭に乗せた。
ゆっくりと撫でる手つきは、妹を扱うように撫でてくれた灰原ととても似ていた。
──────こうやって、彼らを七海と灰原に重ねてしまうなんて。失礼なことだというのはわかっている。それでも彼らの存在が私の支えになっている。
ふぅー…と、軽く深呼吸をして心を静める。
『…戦闘する、ってなっても、ある程度は反撃できるし…』
「……あァ、それは十分理解している」
にやりと、あの時の初めての戦闘を思い出したのか、意地の悪い笑みを浮かべた。
*
ふわりと、夜の気持ちいい風が吹く崖の上。盛り上がりの熱気に当てられた顔を冷ますために酒場をこっそりと抜け出し、少し離れた崖の上に来ていた。
海を見渡せてとてもいい景色だ。
ベポくんは飲み比べに、ローさんは酔っぱらった船員さんたちに絡まれて席を離れて行き、退屈さも感じ始めていたところだったので、気分転換にも丁度いいだろう。
「──────よッと、」
『!…ペンギンさん』
座り込んでじっと海を見つめていると、隣にペンギンさんがやって来た。
ゆっくり腰を下ろした彼はまだあまり酔いは回っていないようで、しっかりとした口調だ。少しの間雑談をしていると、ふと、彼の纏う雰囲気が変わった気がした。
「なぁA、」
『?…なに』
「明日、マジで俺らと離れんの?」
『…うん』
船員さんたちと同じようなことを聞いてきた。ずっと次の島で降りると言っていたし、船まで用意してもらって今更決めたことを変えようとは思わない。
またいつか会いましょうね、と口にしようとして彼の方に顔を向けると、ほんのりと、右手に温度を感じた。
それが彼の手だと気が付く前に発せられた言葉に、私の思考は停止した。
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2022.9/25
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ちあき(プロフ) - shionさん» 初コメありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!!続編までもう少々お待ちください!! (2022年9月29日 8時) (レス) id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 初コメ失礼します!!読んだら本当に止まらず、すっごく面白くて!!もっと早くに出会っていたかったですっ…!続編ずっと待ってます!! (2022年9月29日 1時) (レス) @page50 id: f0db8db4d6 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - ttakedasaki0906さん» ありがとうございます!!そうですね、キッドさんも続編以降出せたらなとは思ってます!楽しみにしていて下さい!^^* (2022年9月28日 16時) (レス) id: 1ed832ee63 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - ローの独占欲が最高すぎてニヤニヤしちゃいます笑!!キッドも好きなのですがキッドは登場予定はありますか!?(≧∀≦) (2022年9月28日 0時) (レス) @page50 id: 668cdece5e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - きゃーぽんさん» わあ、、出会ってくれてありがとうございます!!頑張ります! (2022年9月27日 11時) (レス) @page34 id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年9月22日 18時