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「待てって!!
なんやねん同一化って…!」


彼女は俺の目を見る
その決心が揺らぎないことを
俺に訴えるように。



「A…!」



俺が名前を呼ぶと
彼女の肩はビクッと動いた



「俺はAと生きていたいよ…」


彼女は瞬きをした
まつ毛がばさりと被さって
彼女の髪も揺れる

空の高く上の方には
鳥が群れを作り 羽ばたいてゆくのが見えた






「…永瀬くんっ……、、」






その瞬間、

初めて生の声を聞き
Aの本当の顔を見た気がした


涙を押し殺してきたその綺麗な唇が
ふるふる、と行き場をなくしている。



時空が裂けてその合間から
氷水が流れ込むような 衝撃的な数瞬は
彼女の本音だと、
俺は 受け取ることにした。



Aに駆け寄りその細い身体を抱きしめる。
柵越しの彼女は か細く 確かに 震えている。



あと数センチ先に 彼女の未来が待つ下で
俺は 絶対に 彼女を離さない








ふたりで地べたに座って空を見上げる
うっとうしいくらいに眩しい青空。



「Aに何かあるんなら話して欲しい。
俺が助けられるなら、何でもするから。」


我ながら 恥ずかしい事言ってるなーとか
わかっているけど
彼女に真っ直ぐに届けたいから
柄にもないこと言ってみる。


「…私ね?
永瀬くんといると 気持ちが楽になって
家に帰りたくなくなって
勉強も学校も そんなの全部必要なくなって

もういっそのこと、永瀬くんになれたら。
ずっと一緒にいられるのにって、思うの」



彼女は 馬鹿馬鹿しいよね、とつづけた



「私の家ね、お父さんがDVで
お母さん鬱になっちゃって。
昨日に私の唯一の家族も、死んじゃったの…」


「ペット…?」


彼女は頷いた
その頷きを見て 俺はまた空を見上げた



「もともと老犬だったのに
お父さんに蹴られたり殴られたりしてね
昨日 家に帰ったら死んじゃってた…」



彼女の声は震えていた
俺は彼女の左手を掴んで握った
少しでもいいから
その痛みを俺に移せばいいと、思った

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霞草(プロフ) - ciels0604さん» コメントありがとうございます!有難いお言葉をいただきます、しっかり胸に留めて毎日を過ごしたいと思います。貴重な時間をこの作品に、ありがとうございました(;_;) (2019年3月7日 17時) (レス) id: 402b5f83f6 (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - ともなさん» コメントありがとうございます!言葉を届ける機会があってこういう形で繋がれて感謝です…ありがとうございます! (2019年3月7日 17時) (レス) id: 402b5f83f6 (このIDを非表示/違反報告)
ciels0604(プロフ) - 完結おめでとうございます。これを書いていたのがまだ、高校生だったとは驚きました。子供と大人の間を生きる微妙な時間はもうないです。大人になるに連れて見なければいけない現実があります。同じ時間は二度と戻って来ないので今を大切に生きてください (2019年3月6日 1時) (レス) id: 4086de47ce (このIDを非表示/違反報告)
ともな(プロフ) - 更新お疲れ様でした。ほんとに素敵なお話でした。最後のページの霞草さんの言葉が今の私には強く心に刺さりました。涙が止まりませんでした。素敵なお話と言葉を届けてくださってありがとうございました。また作品楽しみにしています! (2019年3月5日 22時) (レス) id: 65acdc1e61 (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - こんばんはさん» コメントありがとうございます!少しでも恩返しが出来たらとおもいます、これからを頑張ります! (2019年3月5日 16時) (レス) id: 402b5f83f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霞草 | 作成日時:2019年2月25日 6時

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