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鼻につく消毒液の匂い。
パタパタとどこかで走る足音。
規則正しく刻まれる電子音。
慣れたくないものに慣れてしまった。
来たくない場所だった。
帰りは智くんち寄ろうかな、なんて。
寄らなくていいかって思ったからかな。
バイトに行って3時間ぐらいが経った頃。
いつもはニコニコしている店長が
少し焦ったような声で。
《櫻井さん、事務所までお願いします》
そんな放送が入って、事務所まで戻った。
ノックをしてから中に入ると。
『落ち着いてね、電話、俺出てるから』
トントン、と肩を叩いて
事務所から出ていってくれた背中を見送って。
頭をよぎった嫌な予感を打ち消して。
そうでない事を願って。
この電話の相手が、
夏海ちゃんじゃありませんように。
そんな願いも虚しく。
『……もしもし』
電話の向こうですすり泣くのは
夏海ちゃんだった。
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作者名：さとか | 作成日時：2018年8月23日 21時
