モノローグ壱 ページ4
「俺、狛治になりたかった」
そんなこと、言わないでよ。
私はあなたのことが好きなのに、姉さんとの恋路を応援したくなってしまう。
前世から、あなたのこと好きだったのに。
【前世】
私は前世も姉さんの妹だった。
「A」
今と全く変わらない、声で私を呼ぶ狛治さんも。
「恋雪さん、体調はどうですか」
私の大好きな姉さんを大切にしてくれる狛治さんも大好きだった。
でも、姉さんと狛治さんが幸せになってほしかった。
……少し胸が痛かったけど。
狛治さんは大切な父親を亡くしてしまったらしい。
私は、そんな狛治さんの大切な存在代わりになりたかった。
それも姉さんがいたから無意味だけど。
姉さんは美人な上に優しい心の持ち主だから色んな人から好かれる。
私もそんな姉を誇りに思っていた。
だが、心を持たない隣の道場の息子によって、姉さんは命の危険にさらされたことがある。
その日、私と狛治さんは誓った。
「恋雪さんを、絶対に守ろう」
姉さんが狛治さんに惹かれる理由をものすごく理解した。
嗚呼、この人は姉さんの隣にふさわしい人だ。私には並ぶことは許されない。
元気になった姉さんと私の想い人が婚約することは実に仕方のないことだった。
その日は自分の部屋で一人で泣いた。
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作者名:山口 | 作成日時:2020年12月6日 9時