その監督生、よく落ちる。【ツイステ】 (ページ3)

今日:29 hit、昨日:20 hit、合計:101,993 hit

予期せぬ言葉ページ3

というか、どうして僕はここにとどまっているのだろう。

よく考えてみれば、ここにいる必要はないはずなのに。

『あのー…なぁんか盛り上がってるところ悪いんですけど…』

「そういえば、君はついさっき棺桶から引きずり出したから

寮決めをしていなかったね。」

『あ、はい。』

どうやら発言権は失った模様。

もう一度発言の機会が与えられるはずもなく

中に顔が映った大きな鏡の前に立たされた。

「汝の名を告げよ。」

どうやら、この世界では鏡が喋るらしい。

僕のいたところにも魔法はあったけど、ここまでは進んでいない。

正直、少し驚いた。

『…A・ソリトゥス。』

「A・ソリトゥス……汝の魂のかたちは……

わからぬ。」

返ってきたのは、案外拍子抜けな答えだった。

どうやらイレギュラーな出来事らしく、先ほどまでニコニコしていた赤髪の人が狼狽えている。

「この者の魔力には、色がない。

魔力そのものの存在は感じれど、無と表すのが最もふさわしい。

よって、どの寮にもふさわしくない！」

『…え。つま、り…？』

「この世界に、お前の居場所はない。」

感情が、崩れそうになった。

無意識に作り上げていた外装が、音を立てて。

あぁ、そうか。

非日常の中にも、僕の居場所はどこにもない。

『…そっかぁ…残念。

おーい、さっき話しかけてきたテラコッタ髪の奴！』

「え、俺？」

『ごめんな、友達作ろうと思って頑張って話しかけてくれたんだろうけど

僕なんかここにいちゃいけないっぽいわ。』

笑えているだろうか。声はちゃんと弾んでいるだろうか。

取り繕わないと、バレないように。

僕は、普通なんだ。

「…ッ…お前…」

『じゃ、僕はこれで失礼しまーす。』

人波をかき分けて、呼び止めるテラコッタ髪の奴の事も無視して

走った。この場から離れることだけを目的として。

自分が被った仮面が、剥がれる前に。

「…気持ちわりぃ笑顔。」

　

　

『はぁ…はぁッ…ふぅ…これだけ離れれば、大丈夫だよね。』

自分でもなんてばかなことをしたんだろうと思う。

見知らぬ場所で、後先考えずに走り出す。

これほど愚かなことはない。

けど、後悔はしていない。

どうせ居場所がないのなら、どこにいたって同じなのだから。

一人になったことで、安堵したのか表情筋の力が抜けた。

いつものように、感情もなく何もなく過ごす日々が

帰ってきたようで、そうでもなくて。

『…気持ち悪い感情。』