World of what-if... 【私たちの日常】 (ページ20)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:5,222 hit

Happy birthday to Akano＊＊ページ20

肉眼では少し先の方がぼやけるくらいに長い長い廊下の中、一人の少女が歩いていた。

手に、封筒を持って。
――……というのも今朝起きると、部屋の中に入れられていたのだ。
もっとも今持っている理由は、その中の便箋に書かれた内容が関わってくる。

が

(……これは分かりやすい)

その封筒は闇色をベースに、褐色の惑星やカラフルなラメがちりばめられた――いわば宇宙のデザインされたもの。

こうも趣味が如実に表された封筒使ったら、本人に正体を自らバラしているようなものだろう。
様々な人に"鈍い"と言われる緋乃でもなんとなく分かったのだ。常人なら理解してしかるべき。

(にしても、なんでこんな意味の分からないことを……)

あの人、今９月の校外学習のことでだいぶ忙しいんじゃないのか。

緋乃が考えているのは、おそらくこの手紙の主であろう人物。

無駄に頭のキレる彼女。
しかもこういうことをするのにはあの鈍感モテ男幼馴染みやあのゴリラ面とかあの仲の良い性別不明とかが関わっているのに。

(こんなミスするの、ありえない。)

そこはまぁ"流石"というに相応しい付き合いの長さ、これほどのことは分かる。

こんな分かりやすい手紙
こんな意味不明な内容
わざわざ部屋の中に入れて

これまでは普通に電話やチャットでやってきた、"天さんの部屋に呼び出す"なんてこと。

「……って、天さんの部屋ここじゃん。」

気が付けば目の前まで来ていた。

(まぁ、それもそうか。部屋は同じ階なわけだし。)

なんてことに今更気付くほど深く脳内で思案を繰り広げていたようだ。

……とりあえず、手紙の指示通り部屋に入ろう。
いくら頭の中で想像を繰り広げていても、入って確かめてみないことには真相の１つ分かりやしない。

『コンコン』

「天さーん？入るよー？」

そう問うも返事はない。

(いやでも呼び出されてんだよね……？)

手紙には時間までしっかり書いてあったし事実緋乃も１分前に来てる。
これでは入るなという方がおかしいだろう。

んー……とわずかに唸ってから

「……いいよね？入るよー入るからねー？」

と、ドアの向こうに声をかけ、"こんだけ言ったからいいよね？"と呟く。
そしてそのまま筆記体フォントで"Sorane sanada"と書かれたドアのノブを引いた。