奇跡の少女

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私がフィニッシュのポーズをとった時、入り口の方で誰かが拍手する音が聞こえる。





びっくりして振り向くと、手を叩きながら、目を見開いて私を凝視しているゆづくんの姿が。






長い沈黙のあとゆづくんが口を開いた。





結弦「A…そんなに上手かったっけ…？」





と、真面目な顔して聞いてくる。







それが面白くて笑っていると







結弦「なんで笑うんだよ！」





と笑いながら言う。





ひとしきり笑って私はゆづくんにゆっくり近づいて行った。






A「なんで来たの？」



と尋ねると、



結弦「あっ！そうそう。手袋を忘れたはずなんだよね。」





とベンチを探す。




結弦「あった！」




と言ってそのまま帰っていくのかと思って見ていると、ベンチにちょこんと座った。




思わず


A「えっ？」





と言うと、




逆に




結弦「えっ？」




と返される。






A「帰らないの？」




と聞くと





結弦「Aが帰る時危ないから待ってるよ。送ってく。」





とさも当たり前のように言われる。





A「いいよー。笑」




と断ると、



結弦「いいのいいの。」




と言ってその場を動かなかったのでその言葉に甘えることにした。





彼女が練習しているのをぼーっと見ていると終わったようでこっちに向かってくる。






走ってきて



A「着替えてくるから待ってて。」




と言われ、静かに待つ。





しばらくすると、普段着にモコモコのマフラーと手袋をしたAが走ってくる。







結弦「帰ろ。」



と言うと、笑顔で





A「うん！」




と嬉しそうに返事をした。









冷たい夜風に吹かれて歩き、ときどき当たる手がもどかしかった。




会話こそほとんどなかったが変な気を遣わず、歩けるのが、お互いに心を許している証だった。

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