奇跡の少女

前夜 ページ26

ジュニアグランプリファイナルへの移動前日。






今年は日本開催のため、時差ボケの心配もなく、大会前日に会場の向かうことになった。





最後の練習を終え、僕は1度家に帰った。
しかし、忘れ物をしたことに気づきお母さんに忘れ物取りに行ってくる！と矢継ぎ早に言って歩いてすぐのアイスリンク仙台へ向かった。





受付の人に忘れ物を取りに来ました。と言うと笑顔でどうぞ。と言われる。





一言お礼を言い、ロッカールームへ足を踏み入れた。いつも使っている001のロッカーを開けるとそこには何も入っていなかった。




結弦「あれ？リンクサイドかな？」





と思い、リンクサイドに向かう。




リンクに通ずる扉を開ける。





すると、誰も居ないはずのリンクから誰かが滑っている音と、何度も聞いたことがある曲が流れていた。




滑っているのはスタイルのいい華奢な女の子だった。





結弦「A…？」





俺は忘れ物のことなど忘れて彼女のプログラムに見入っていた。






今までとは明らかに違う高い表現力、スケートへの熱い情熱。そのすべてがつまった力強く、美しい滑り。








最後にスピンをして彼女がフィニッシュのポーズをしたとき、俺は無意識に拍手をしていた。

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