検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,016 hit

肆話 ページ4

不快感を覚える汗を手のひらで拭った。

外の空気に安堵した、でもその安堵など気休めでしかなかった。

違和感を感じたのからだ、手に、額に。

汗を拭ったのだ、濡れていてもなんら不思議ではない。

それでも手のひらに違和感を感じた。

見たくはなかったが、恐る恐る手のひらを見た。

手のひらは赤黒く、異臭をはなっていた。

それが血だと理解するまで、時間はかからなかった。

そしてそれが誰の血かなど、確認するまでもない。

私の血だ、この血は私の額からだ。

凍寒に震えるかのような手で、額に手をのばす。

直後、激痛がはしった。

額が裂かれている、血が瞳へと滴る。

こんな傷はすぐにでも止血しないと、死ぬだろう。

止血しなければ、そう思っても体が上手く動かない。

いつだ、いつあの化け物にやられた…?

考えれば考えるほど、眩暈がして吐きそうになる。

私はその場に崩れおちた、額を押さえたまま地面に膝をつく。

状況は最悪だ、あの化け物に殺されなくとも私は死ぬ。

それなのに…私は心底、神に嫌われているらしい。

「グァァァァァ!」

目の前にあの化け物が再び現れた。

怪我で死ぬことも許されず、化け物に無残に殺されるのか。

そうなっても仕方がない。

家族はみんな剣技への誇りを捨てず、戦ったのだ。

それが無意味だとしても、戦って死んだのだ。

それなのに私は刀も握らず、醜いほど生に縋った。

でもみんなが大切にしてきた誇りなんて、

剣技なんて…無価値で無意味で、無駄なものだよ。

あの化け物からしたら、塵くずでしかないんだよ。

今になって更に苦しくなる。

だってどれだけ剣技が優れていても…。

その化け物は、鬼は、ただの刀じゃ――――殺せない。

もういい、この現実という悪夢が続くなら…

永遠に幸せな夢をみたい。

瞳を閉ざした。

みんなが大切にしていたものが塵くずだったのに気づいて、

馬鹿らしくて、笑えた。

それでもやっぱり、死ぬのは怖かった。

「――――グシャ!ゴトン!」

目を瞑って聴覚が敏感となった空間で、斬り裂く音がした。

それはさながら、強い風が木々を斬り裂くようだった。

何が起こったの…?

そう思い閉じていた瞼をゆっくりと開いた。

「おい鬼ィ、死んじまったかァ?

 俺は鬼殺隊・風柱 不死川実弥。

 テメェの頸をォ捻じ斬る風だァ。」

月光に照らされた白銀の髪、傷だらけの力強い腕…。

救世主が現れた、気休めでない安堵を感じた。

そこから少しの間、気を失った。

伍話→←参話


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆

これを食べるといいでしょう!

おはぎ


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:不死川実弥 , 短編 , 涼野紫乃
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

涼野紫乃(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!一日一話の更新で進めていこうか…と考えています。コロナ気をつけます!まぁ引きこもりなので大丈夫そうですけど(^ω^) (2020年5月11日 10時) (レス) id: 7af1ab1bb6 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 面白いです!コロナに気を付けて更新頑張ってください!! (2020年5月11日 0時) (レス) id: 91d3028c1e (このIDを非表示/違反報告)
涼野紫乃(プロフ) - ろうろんさん» あ、ありがとうございます!リアルでもまた感想教えてね(´▽`)そっちも頑張って〜! (2020年5月10日 11時) (レス) id: 7af1ab1bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ろうろん(プロフ) - おぉ!新しいの出しとる!これは見なアカンな!(/*´∀`)оファイトー (2020年5月10日 11時) (レス) id: 37af50f85d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:涼野紫乃 | 作成日時:2020年5月10日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。