義勇さん好き集まれ！義勇さん短編集〜 第１弾

酔っ払って帰ってきたら… ページ9

冷たい言葉に聞こえるかもしれないが

その中には確かな優しさがあって、

「安心しろ、大丈夫だ。」

そう言われているようにも思えた。

煉獄さんと甘露寺ちゃんが少し先を歩いている

その後ろで私たちは小さく手と手を結んで、歩いていた。

お互い黙ったまま、何も会話を交わさなかったけれど、

私はその沈黙がとても心地よくて

たくさんの鬼を切ってきた後の気持ちとはとても思えなかった。

そうか、この後…義勇さんは宇髄さんと飲みに行っちゃうんだ。

この手が離れていくのがやっぱり嫌で、

無意識に義勇さんの手を握る力が強くなっていた。

ハっと我に返って、手を握る力を少し緩めると

今度は義勇さんから私の手を強く握ってくれた。

つい嬉しくなって、義勇さんの方を向いた。

義勇さんはもうすっかり夜を迎え入れた、

暗闇で一杯の空に輝き浮かぶ、欠けた月を眺めていた。

でもその横顔は確かに、朱に色づいていた。

義勇「一人にしてすまない、今日中には必ず帰る。」

私にしか聞こえない声だけど、確かな声で呟いた。

私はコソっと義勇さんに耳打ちをした。

「楽しんできてください…そう言いたいですけど、

　やっぱり少し寂しいです。

　だから覚えておいてくださいね。」

耳打ちをした後に、触れるだけの口づけを

義勇さんの唇におとした。

普段はこんなことしないのに…

今日の私は、かなり疲れている。

義勇「―――――――――っ！
　
　 分かった、しっかりと…覚えておく。」

口元を手のひらで隠して、私を真っ直ぐに見つめてそう言った。

自分からキスをしてしまったのも、

「寂しい」なんて義勇さんを困らせる本音を言ってしまったのも、

全部全部、今日の月が綺麗すぎて自分の我儘な本音も

綺麗にしてくれると思ったからということにしておこう。


その後、甘露寺ちゃんと煉獄さんは自分の屋敷へ、

義勇さんは義勇さんの屋敷で先に待っていた

宇髄さんと一緒に飲みに行った。

私はといえば1人で義勇さんの屋敷へで、

今日の夕ご飯を食べている。

美味しい、でも義勇さんがいたらもっと美味しいだろうな…。

そんなことを思う私は、もう取り返しのつかないほど

義勇さんなしじゃいられなくなってしまっている。

お風呂に入って、いつも通り今日の出来事を日記に記した。

2時間ほど経っただろうか…。

睡魔はやってこない、体は疲れているはずなのに眠くない。

義勇さん、まだかな…。

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