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夏空に融けた君 - ともやん ページ8

「……どこだ、ここ」


……まだ夢を見ているんだろうか。目を覚ました俺は、見たことない神社の前にいた。周りには誰もいない。


「誰かいませんかーー?」


叫んでも、聞こえてくるのはうるさいほどの蝉の声だけで。俺は無性に怖くなって、1人あてもなく走り出した。


この切れる息もこめかみを伝う汗も、夢なんかじゃない。間違いなく現実だ。
じゃあここはどこだ。なんで俺だけこんなところに。疑問が次々と湧いては消える。ただ今は、足を止めたら得体の知れない“何か”に襲われるような気がしてならなかった。
そのときだ。気のせいかもしれないが、誰かに足を掴まれた。


「ちょ……!?」


バランスを崩し、そのまま地面に倒れこむ。自分の後ろに、その“何か”が立つ感覚がした。
……殺される。そう諦めたときだった。


「大丈夫?」

「……え?」


想像とは別に後ろから聞こえたのは、幼い子供の声だった。振り返れば、白いワンピースを着た長い髪の女の子がいた。


「立てる?痛いとこない?」


そう言って少女は手を差し出す。俺はあっけにとられながらも、素直にその手を取った。


「大丈夫……ありがとう。
ねえ、ここどこかわかる?」

「……お兄さんがいちゃいけない場所」

「え?」


……なんだよそれ。俺がいちゃいけない場所?
じゃあなんでここに連れてこられたんだよ。


「一緒に帰り道探そ?手伝うから」


彼女が俺の顔を覗きこむ。駄目だ、誰かに似てる気がするけど思い出せない。
加えて、幼い女の子に先導されるのもどうかと思ったが、今は帰ることが最優先だ。


「じゃあ、任せていい?
ちなみに名前は?何て言うの?」

「教えなーい」

「え、ちょ、おい!」


突然年相応なことを言われ、思わず大きな声が出る。だけど気にも留めてない様子で、彼女は笑いながら走っていった。
しばらくその様子を眺めていたが、意外と足が速く。もう1人になるのはごめんだと思い、俺は慌てて後を追いかけた。

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RiA(プロフ) - ゆきみふさん» 急にコメント送りたくなって下さってありがとうございます…!(?)そう言っていただけると嬉しいです!これからも見ていただければ幸いです。 (2019年6月30日 12時) (レス) id: 0d8cb9afc6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみふ(プロフ) - RiAさんのお話大好きです。これからも頑張ってください。(急にコメント送りたくなったマンです。) (2019年6月30日 8時) (レス) id: ab6e6f8434 (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - なぁさん» ありがとうございます!「その声が響くまで」はちょっと読みにくくなったかな…?と不安だったので、そう言っていただけて嬉しいです!この先も見ていただければ幸いです。 (2019年5月10日 7時) (レス) id: 03fac5b4f8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - 前作から一気に続編まで読んでしまいました!前作の「その声が響くまで」が大好きです!推しが千葉ちゃんですが、やっぱり箱推しです!全話いい話すぎて語彙力を失います!笑 更新楽しみにしてます! (2019年5月10日 0時) (レス) id: 07945c6d2e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RiA | 作成日時:2019年5月7日 0時

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