10-3 ページ48
＊
拓弥に連れられて電車に乗り込む。しばらく揺られてある駅で降りた。拓弥が先を歩き、私がその後について行く。改札を出ると拓弥は私に手を差し出してきた。流れで拓弥の手に自分の手を近付けるとそのまま手を繋がれた。
たわいもない話をしながらのんびり歩いていると、ある建物の前で拓弥が止まる。そこには青を基調とした看板。魚やイルカ…など海の生き物が多く描かれていた。
『拓弥がやりたかった事って水族館に行くことだったんだね』
「あー、…まぁそうっちゃそうだね」
煮え切らない反応をした拓弥だけれど、顔を見ると楽しそうな表情をしていた。
なんだか今日の拓弥はいつもと違う。ちょっと落ち着かないっていうか、ソワソワしているというか。それにいつもなら手とか繋がないのにいつのまにか繋いでいる。拓弥から繋ごうとしてくる。
「行こう」
『うん』
水族館なんて、いつぶりだろう。
ずいぶん昔に拓弥の家族と一緒に行ったことは記憶にある。私も拓弥もまだ小学生で、拓弥の兄弟もまだ幼稚園にあがったばかりの頃だった。それ以来行ってないかもしれない。
入場券を払おうとお財布を出そうとしたら、拓弥にチケットを渡された。あれ？もう払ったの？疑問に思って拓弥を見るけれど、なんともないような顔をしてまた私の手を握って中へと入って行く。一瞬目が合った受付のお姉さんはこちらを見てニコニコ笑っていた。
『拓弥、入場券…』
「いいよ別に。俺が連れてきたんだし」
『や、でも払わせるのは…』
「ほら！時間もったいねぇから行くぞー」
さっさと中に入って行く拓弥を慌てて追いかける。…そんな私は自分がヒールを履いていたことを忘れていた。いつもと違う感覚がしたと思いきや、そのまま転びそうになる。
あ、危ない。
反射的に伸ばした手。それをつかんだのはまぎれもない拓弥で。グイッと引っ張られて視線が重なる。不覚にもその仕草にドキッとした私は何も発せずに拓弥を見つめた。そんな私の心情を知らない拓弥は柔らかく笑う。
「あほ。そんなに急がなくてもちゃんと待ってる」
…やっぱり、今日の拓弥はいつもと違う。
＊
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←10-2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たろたろ。 | 作成日時：2016年7月19日 19時
