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見られているような、見られていないような。そう感じているだけだと思うけれど、それでも目線は地面に向いてしまう。下を向くと今の自分の格好がよく見える。甘めの白いワンピースに黒のレザージャケット。少し高いクリーム色のブーツ。
…こんな服着たことない。いつもはジーンズにパーカーとかなりラフな格好しかしない私にとって、まず制服以外のスカートは難易度が高いのだ。







『これ本当に似合ってる?すごく恥ずかしいんだけど…』

「似合ってる似合ってる」

『すごく見られてる気がするんだけど』

「気にすんな。見られてないから」

『…スースーする』

「ワンピースだからしょうがない」







私の発言をことごとく潰しまくる拓弥を睨む。拓弥は相変わらず平然とした顔で私の横を歩いていた。その余裕っぷりはムカつくけれど、ちゃんと私の歩幅に合わせてくれるのが分かったから今回はよしとすることにした。


今私は拓弥に連れられて駅前に来ている。ビルのガラスに映る自分の姿はやはり見慣れない。髪の毛はくるくるとウェーブがかかっているが、横髪だけバレッタで後ろでとめてある。白い肌にキラキラとした目。私じゃない誰かが拓弥と歩いている姿が映し出されている。…これ本当に私なのだろうか。



そう。拓弥が持って来た荷物は私が今着ている洋服、髪留め、そして化粧品だった。拓弥はもともとオシャレだし、そういったファッション系に興味があることは知っていた。まさかメンズだけでなくレディースもだとは思わなかったけど。

私の髪の毛も挙げ句の果てにメイクまでも完璧にこなした拓弥は多分これが天職なんだろうなと妙に納得してしまった。






『どこいくの』

「んー、行きたい場所ある?」

『や、急に出かけるってなったから特にはないよ。それに持ち合わせも少ないし…』

「なら俺がやりたいことやっていい?」

『…いいけど』

「なら決定」






そう言った拓弥は急に私の腕を掴んで前へと進んだ。
その手は徐々に下がっていき私の手と重なって繋がった。驚いて身を引こうとするが、拓弥は手を離してはくれなかった。…拓弥と手を繋ぐのなんて小学生以来だな。拓弥も懐かしく感じているのだろうか。


ふと疑問に思って拓弥みると、とても嬉しそうに笑っていたから多分私と同じことを思っているのだろう。

私も拓弥の手をギュッと握り返した。







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作者名:たろたろ。 | 作成日時:2016年7月19日 19時

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