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「Aちゃん、話してはくれるようになったけれど、なかなか笑ってくれないからさ。どうしたら笑ってもらえるかなって考えていたんだよね。そしたらこーちゃんが「食べ物食べると笑うやろ」って言ってて!
女の子って甘いもの好きなイメージあったから、ここがいいんじゃないかと思って、お礼も含めて連れてきたの!」
『吉野くんの提案だったんだ』
「そうだよ!…でもこのお店ね、俺にとっては少し問題があってね…女のお客さんが多いの!
前から男のお客さんより女のお客さんが多いのは知っていたけれど、今日は男の人俺しかいなくてちょっと恥ずかしかったんだ。でも気に入ってくれたみたいで嬉しい!」
…本当に不思議な人だ。私なんかの笑顔が見たいからという理由で女の人が多いこのお店に行くなんて。今だって男のお客さんは佑亮くんだけ。
このお店に入った時に奥の席に行ったのは、女の人しかいなくてあまり人目につかないようにするためなんだろうなとは思っていたけれど、前から女のお客さんが多いってとこを知ってたんだ。
それをわかっていてもここに連れてきてくれたなんて。
多分緊張しただろうな。
佑亮くんには男女ともに友達が多いけれど、こういう喫茶店に行くっていう話は聞いたことがなかったから。
『ありがとう。…私、このお店好きだよ』
佑亮くんは少し驚いたような顔をしてうん、と小さく呟いた。その顔は少しだけ赤くなっていた。
…お礼言われて照れてるんだろう。
お互いの目線が合って何を話すわけでもなく見つめて……同じタイミングで可笑しくなって笑った。
『よし、冷める前に食べちゃおう』
「そうだね」
そして私はもう一度パンケーキを食べて進めた。
だから気がつかなかった。
佑亮くんが私を見ていたなんて。
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作者名:たろたろ。 | 作成日時:2016年7月19日 19時