熱 [影オロチ]* ページ7
「はあ…はあ…」
「38℃か…昨日雪が降ったとはいえ、冬の外ではしゃぐなと何度言ったら分かる」
厚い布団の中で熱そうに口呼吸する。
さくら元町があまり雪が降らないとはいえ、雪が降った時のテンションは上がってしまうのは誰が起きても可笑しくないことだ。
この日、影オロチとAは久々にどこかへ出掛けるはずだったのだが
Aがこの通り、外の寒さの影響で熱を出した。
電話越しでも彼女の声が息苦しそうにしていたのを察して、影オロチはゼリーや水の入ったペットボトルなどを持参していた。
体温計で計ってみれば思っていた通り、高熱を出している。
折角の休みなのに、彼に迷惑をかけてしまったのではないかと後悔する自分もいる。
「安静に寝ておけ、卵粥作るから待ってろ。」
頭に手をぽんと置くと、キッチンへと向かう彼の背中。
だがAの右手が彼の服を軽く引っ張り、それを拒んだ。
「ごめんなさい…貴方と一緒にいられるのが嬉しくて舞い上がって…また迷惑かけてしまって……」
「謝罪なんて求めていない、あまり喋ると喉を傷めるぞ」
「…………じゃあ、何したらいい?」
「は?」
「そんなんだと、私ずっと引きずるから。影オロチさんは私が何したら許してくれる…?」
迷惑だと思って謝っても、謝罪はいらないなんて言われれば本当に気にしてないのかと不安になり、結局引きずってしまう。
まじまじと見つめている瞳は、悪いことして落ち込んでいる子供のようだった。
怒られるよりもノーリアクションで答えられたり、手放すような答えの方が余計怖く感じるのだ。
はあ…と彼がため息をついた途端、影オロチはベッドで寝転んだままのAを抱きしめる。
「…!」
「『熱を治す』…それだけだ。だが…、治った時は覚悟しろよ…?」
最後に耳元で囁いた彼の言葉は、Aの体温を更に高める。
覚悟というワードは、立派に成人している彼女には大体分かる内容だった。
意地悪に囁く彼だが、やはりそれでも彼は優しい。
ほんと、影オロチさんは狡い
「俺は一日そばにいるから、何かあったら教えてくれ」
そう告げた後すっと抱きしめた腕を放して、そのまま離れていく。
その時の彼の表情は、影とは思えない優しい目をしていた。
…さっきの言葉で顔から徐々に熱くなったのは、卵粥を作っている彼には内緒…。
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作者名:日依 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=sorairokopikku2
作成日時:2024年1月20日 1時