前髪 [影オロチ] ページ5
※【毎日が幸せ|お題ガチャ|お題箱】から
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私の恋人である、影オロチさんは右目を隠すように前髪が長かった。
彼は別に気にしているわけでもなく、寧ろ数十年前からずっとらしい。
でもいつもより長すぎているから、そろそろ切ろうかと彼はそう言っていた。
不本意に「私が前髪切ります!」と言ってしまうと、彼は何も言わなかったが嬉しそうにしていたのは覚えている。
だが、実はあることを考えていて切ろうか迷っている。それは
「(前髪切ると、影オロチさんの印象変わるし、何より綺麗な顔を他の人たちに見られる…!)」
自分でも嫉妬深いことは分かっていた。
でも、彼の綺麗な顔立ちが更に見えやすくなると別の女性が寄って来るんじゃないかと懸念する自分がいた。
座ってもらっている影オロチさんを前に、ヘアカット用の鋏を手にしたまま考え込んでいると
影オロチさんが口を開く。
「……まだ切らないのか?」
「あ、いやどこまで切ればいいかなって…」
「肩まででいい、あまり自分の顔を目立たせたくないからな」
彼が言ったことに、自分が考え込む必要はなかったようだ。
彼は元暗殺者だった身なのか、どうやら右目を隠すほどの長さは絶対みたい。
安堵してようやく前髪を切り揃えると、彼は私に話しかけた。
「何故、前髪切るだけであんなに考え込む必要がある」
「べ、別になんでも…」
「誤魔化すなら、お前が好きだと言っていた菓子はやらんぞ」
「言います、言いますから!」
流石に食べたいぐらい好きなお菓子を禁止されたら、嫌でも言ってしまう。
今まで言えなかったことを、彼に伝えるしかなかった。
大好きな人に、嘘なんてつきたくないし。
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作者名:日依 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=sorairokopikku2
作成日時:2024年1月20日 1時