花魁 2ー17 過去2 ページ20
そして夜
梅の目の前には威圧の気配のある大門が広がった。
提灯の灯りや人の騒ぎ声。
悠之助「いいか、梅。この大門は一度入れば、年期明けか身請けされるときまでは二度とこの遊郭が出られないと肝に命じるんだ。」
梅「はい」
そう、この大門は男にとっては極楽浄土。
そして、女にとっては生地獄の扉。
まだ、純粋な梅にはわからない世界を今から入らなければならないということ。
悠之助に着いていき、遂に仕事場に到着する。
木製の看板には『
悠之助「旦那、『梅』を連れてきやした。」
悠之助の言う旦那とはこの『蒼月』の当主だ。
当主と女将さんは老人だが
当主は優しそうな顔つき、隣の女将さんは厳しい顔つきだった。
当主「ほう、この子は…磨けば美しくなれるな」
女将「旦那様、この子になんて名付けます?」
彼女の言葉に、梅は疑問を抱いていた。
何故、名前があるのに源氏名を名付けるのか?
個人情報の防止の為か?
当主はうーんと考え込むと、ふとあるものを見る。
目線の先には、明るい町並みとは見ることのない、満月だ。
とても、大きく、金色に薄く輝いている。
当主「………そうだ、この子の源氏名を
『月夜』にしないか?」
源氏名の字、月が映える夜。
梅という花の言葉とは全然かけ離れている源氏名だ。
梅「つくよ…?」
当主「嗚呼、あの夜に咲く様に、美しく、月の様に立派な花魁になれるようにという意味で考えたんだ。どうだ?嫌なら別の名前を変えてもいいのだが…。」
梅は源氏名なんて今日初めて知ったから戸惑っていたけれど
当主に良い名を与えようとしてくれたことに、感謝の気持ちもあった。
梅「いえ…、素敵な名前です。」
当主「そうか、喜んでもらえて何よりだよ。今日からお前さんは『月夜』だ。厳しいことはあるが、これからは私達を育手だと思ってくれて構わないよ。」
当主はにこりと優しい笑顔を『月夜』に見せた。
隣で見ていた悠之助も女将さんも、どこか微笑ましそうに笑っていた様な気がした。
月夜「…………宜しくお願いします。」
まだまだ、ひよっ子でなりたてで、
でも、これで分かったことがある、月夜の名前は源氏名ではあるが
当主から授けられた、深い意味を持つ名前だということだ。
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月見だんご(プロフ) - 構いません!宜しくお願いします🙂 (2月14日 14時) (レス) @page24 id: f6787a6d04 (このIDを非表示/違反報告)
日依(プロフ) - 月見だんごさん、ありがとうございます。このシリーズは固定設定なのですがそれでも大丈夫でしょうか?この主人公である月夜は好みが別れるかもしれませんが··· (2月12日 23時) (レス) id: 08b2d47db3 (このIDを非表示/違反報告)
月見だんご - オチがオロチで嬉しい😄自分もオロチが推しなのでこういう作品が見れるのは嬉しいです。もっとオロチとの絡みも見てみたいです。更新楽しみに待ってます😆 (2月12日 23時) (レス) id: 3095a46f05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日依 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=sorairokopikku2
作成日時:2023年2月8日 9時