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【Mondo】 ページ28

静かにベッドに入ってきた時も、寝ぼけながら夜中のリビングに入った今も、くん、と嗅ぎ慣れない匂いに首を傾げた。
なんだか随分と甘ったるい匂いがするなあ、と思いながらも、喉の乾きを潤そうとぱこりと冷蔵庫を開ければ、今度は見慣れないそれに、目をパチパチと瞬かせる。
真っ白な皿に綺麗に並べられた四角くて小さなそれらは、ラップがかけられて静かに冷やされている。その隣に、Aがこちらに来た時に気に入って使っている、淡いピンクの皿の上にも、同じ様に小さくて四角いそれらがいくつか乗っているが、こちらの物は、真っ白な皿に乗っている物に比べて端が欠けていたり、正四角形じゃないものだったりと形がまばらだ。


「"A、何か作ってると思ってたらこれか"」


ベッドに入る直前まで配信をしていたけど、その配信を始める前にAから、いつまでする?とか、そのまま寝ちゃう?とか散々聞かれてたけれど、どうやらこれを作っていることを秘密にしておきたかったらしい。
水の入ったペットボトルを取り出して、その蓋を開けながら、相変わらずこういうサプライズというか隠し事が下手だな、と、今頃ベッドですやすやと眠るAを思い出して、小さく笑みが零れた。
まあ、これは気付かなかったフリをしてやるのが大人かな、とペットボトルを戻して、冷蔵庫を閉める。
閉めてから数秒、冷蔵庫の取っ手に手をかけたまま考えて、そうしてまた、ぱこりと開いた。

―――

すっかり冷えた体を静かにベッドの中に潜り込ませれば、布団の中で丸まっていた小さな膨らみがもぞりと動いた。


「…ん……もん、どぉ…」
「なに?A、おきたの?」
「んー……?んーん…」
「まだ夜だよ。夜中。寝なよ」


布団から顔を覗かせたAが、眠たげに目を擦りながらこちらを見てきたので、あやすように布団の上からぽんぽんと叩けば、Aの瞼がまたとろとろと落ちていく。


「んー……Mondo…なんか、あまい…においする…」
「……気の所為じゃない?それに、どっちかっていうとAの方じゃん。甘い匂いがするの」


顔を近付けて、すん、と匂いを嗅げば、先程のチョコレートの匂いがふわりと香った。
こんなに甘い匂いがするのに、意外とビターだったな、と言えば、もうほとんど夢の中に居るAが、なんだかよくわからない鳴き声を上げたので、さっさと寝ろ、とチョコレートの香りが残った口付けを一つ落とした。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:空色 | 作成日時:2022年1月6日 13時

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