【CR】短編集 (ページ20)

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会いたい君へ【Zeder】ページ20

人でごった返す空港で、ただ一人を探す。
クリーム色に、淡いミントグリーンが差し色のコート。ブーツはチョコの色。大きな鞄は黒で三連の星がついている。
大まかな色と場所が書かれていたメッセージの最後に、写真送れば良かったですね、と書かれていたけれど、その後に続いていた画像には接続不良なのかなんなのか、×と出ていた。
聞こえてくる言葉は、最近覚え始めた異国語ばかりで、元々そんなに外に出ない自分の体が、心が、悲鳴を上げているのがわかる。わかるけれど、それでも。
ただただ、彼女に会いたかった。知っているのは声とゲームの腕前、好きなお菓子の銘柄だけ。
顔も本当の名前も何も知らない、彼女が自分へ向ける好きの種類も知らない。そんな彼女に、会いたかった。

――――

「Aさん、こんばんはぁ」
「はーい、Zederさん。こんばんはー」

ゲームをつけてフレンド欄を開けば、いつもの彼女が一人でロビーに居たのを見つけた。
そっとそのロビーに入って通話をかければ、3コールで出た彼女は、いつもと同じようにふわふわと笑っている。

「Aさん。ああ、どう、したの？ランク、パープルなってる」
「そう！ええ、と、"聞いて、ください。悲しい。落ちました、マスターに"」
「一人でランクしてるから、じゃ、ないの？」
「"起きて、こうでした。だからヤケです。ヤケランク。200ポイント、なくなる、しました"」
「あらぁ」

ぴえん、と言う彼女に小さく笑えば、Aさんは、"笑うの、だめです。Zederさん、ひどい"と拙い韓国語で返してきた。
いつからか話すようになった、お互いの言語のお陰で、随分と彼女と打ち解けてきたように思う。
たまに早口で韓国語を言えば、彼女は一生懸命聞き取ろうとして、何度も拙い言葉で"もういちど、もういちど"と言うから、Aさん、まだまだねえ、なんて、からかうことまで出来るようになった。
そうして最後には"Zederさん、いじわるです。ぴえん"なんて言うもんだから、その声から少し拗ねているのがわかって、それがまたあまりにも可愛くて、俺の口角はずっと上がりっぱなしだ。