藪木 ページ27
夢主side
「………私ね、一度、秘匿処刑が見送りになったの。」
「………………は?」
横の五条君がこちらを見る気配がする。
だけど、私はそれに気が付かないふりをして続ける。
「…高専に入学して…、2学期だったかな。…作った巫蠱呪霊に、負けたの。」
「どういう、」
「藪木家の人間はね、作った巫蠱呪霊を使役するために、一度自分の体を器として巫蠱呪霊を取り込むの。そして、体内で巫蠱呪霊と戦う。自身も巫蠱の一部にするのよ。勝てば使役することができて、負けたらこちらが食われる。」
「じゃあ、お前の巫蠱呪霊も、」
「そう。私が戦って、勝った。だけど、一度とある巫蠱呪霊に、負けたことがあった。大惨事だった。私の体では抑えることができなくて、私の中から出て、人を殺した。…私は生き残ったの。食われなかった。何度も後悔したわ。」
自分は馬鹿だと、何度も自身を呪った。
私の作った巫蠱呪霊が、人を殺した。
でも作った張本人は、こうして生きてる。
そんな馬鹿なことがあるのかと。
「だから一度、処刑されそうになったのよ。だけど、夜蛾先生が、ね。色々、便宜を図ってくれて。上層部が、今回は見逃してくれるってことになって…。中国に、修行に行くことを勧められたのね。」
本当なら、私はすぐにでも処刑されるはずだったのだ。
巫蠱の術=呪詛である。上層部は、呪詛を使う危険分子の私を嫌っているから。
だけど高専の先生達が、補助監督の皆さんが、一つ上の先輩達が、動いてくれて。
なんとか今日まで生きながらえてきたのだ。
「…だからね、次やらかしたら、私、死ぬのよ。」
「…お前はそれでいいのかよ。」
「いいもなにも、別に処刑されたって良かった。私の作った巫蠱が人を殺したの。なのに私がのうのうと生きてるって、おかしくない?」
「…お前が悪くない…とは言えないが…、そんなに、思い詰めることはねぇんじゃねぇの。」
五条君は、まっすぐ前を見つめたままそう言った。
「…………」
意外だった。五条君が、そんな言葉をかけてくれるなんて。
「…そう。そんなに思い詰めることはないって、何とか割り切ったわ。だって私は、生きなきゃいけない。藪木家を残したまま、私は死ねない。」
五条君がこちらを見る。
「…破門同然に追い出されたって、聞いたけど。」
「藪木家の人間は、天寿をまっとう出来ないからね。巫蠱呪霊に負けて死ぬか、悪意のある者に利用され、殺されるか。私は、どちらかしか見たことがない。」
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ただの本名;只野です。(プロフ) - 面白すぎて鼻水吹いた。気長に更新待ってます。1年でも10年でも100年でも。あっ1000年ぐらいはオッケーです。 (7月31日 11時) (レス) @page42 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
佐久間くんが好きなピカソ - えっなんかもう控えめに言って天才??ここまで一気読みしちゃいました、、、!!更新頑張ってください土下座待機してます!! (2023年1月28日 22時) (レス) @page42 id: 8a09725b52 (このIDを非表示/違反報告)
くさ - めっちゃ面白いですね!!!!これからも更新頑張ってください! (2023年1月3日 11時) (レス) @page35 id: 56aae56e91 (このIDを非表示/違反報告)
瞳子 - すみません!!!!誤字ってました(;´_ゝ`) (2023年1月1日 20時) (レス) @page35 id: c668961e12 (このIDを非表示/違反報告)
瞳子 - 物凄く面白かったです!色々なキャラクターが出てきて面白すぎてあっという間に読み終えてしまいました!これからも応援してますとぷり( ≧∀≦)ノ (2023年1月1日 20時) (レス) @page35 id: c668961e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:EL | 作成日時:2022年8月14日 14時