第九十四話 一緒に強く ページ20
「あ、飯田君。今、麗日さんがね…」
「緑谷」
携帯を片手に明るい表情で戻って来た緑谷に向けて、飯田に視線を遣りながら轟は先程医者に宣告されたことを告げる。
「…不和と飯田。今診察終わったとこなんだが、不和は三週間安静にしてろと言われた」
「良かったぁ…！それじゃあ、どこも後遺症は残らないんだね！」
「…ですが」
Aの病状を聞いて、一安心した緑谷。しかし、Aの暗い雰囲気を感じ取って首を傾げた。
「飯田の左手、後遺症が残るそうだ」
「―――！」
それを聞いた瞬間、緑谷は言葉を失った。
「…奴は憎いが、奴の言葉は事実だった」
飯田は俯いたまま、包帯で固定された腕をじっと見つめる。だが、それは決して暗い表情では無かった。覚悟を決めた、真っ直ぐな表情だ。
「だから、俺が本当のヒーローになれるまでこの左手は残そうと思う」
「―――飯田君」
あの時、と出掛かった言葉を呑み込んで、緑谷は拳を突きだす。
「僕も同じだ。一緒に強く…なろうね」
「…ああ！」
その拳を見て、轟はあることが脳裏によぎった。それが事実だとしたら、それはそれは謝っても許せないことだ。
「なんか、わりィ…」
「…何が？」
「俺が関わると手が駄目になる、みてぇな…感じになってる…」
呪いか？と小さな声で呟いた轟を見て、Aと飯田と緑谷は揃って顔を見合わせる。
「ふっ、ふふふ！」
「あっはははは！何を言っているんだ！」
本人は至って真面目に言っているようだが、畳み掛けるようなその表情に耐え切れず、三人はふっ、と吹き出してしてしまった。
「轟君も冗談言ったりするんだね」
「いや、冗談じゃねえ。…ハンドクラッシャー的存在に」
「ふっ…ふふ！ハンドクラッシャー…っ、ですか？」
こんな状況が可笑しくて、先程の苦悩も忘れて笑ってしまう。笑う三人に次第に轟もつられて、笑い出した。何も考えずに笑いあえる今が、ただ楽しい。
それがいつの日か、思い出話のように出逢えてよかったねって言える今日が来るといいなあ、とAは笑いながら思った。
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はと - おかえりなさいませ〜！馬さんの作品めっちゃ好きなので、ずっと待ってました！改めて、お帰りなさい！ (2022年8月28日 14時) (
レス) @page40 id: d15a86ccaf (このIDを非表示/違反報告)
旅人 - 更新されてる！ おかえりなさい！ (2022年8月28日 8時) (レス) id: c3b9825a0f (このIDを非表示/違反報告)
お餅(プロフ) - 更新再開ですか！？待ってましたー！！ (2022年8月26日 22時) (レス) @page37 id: 28886abf9c (このIDを非表示/違反報告)
らん - めっちゃ面白いです〜！合宿らへんから、書くの大変になってくると思いますが、めちゃくちゃ楽しみにしているので、是非更新して欲しいです！応援しています！！ (2022年8月13日 20時) (レス) @page36 id: 3bb41adb05 (このIDを非表示/違反報告)
千椛(プロフ) - 更新楽しみにまってます！！とても面白いです！ (2022年3月5日 9時) (レス) @page33 id: 5a2d0a48cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空天 馬
| 作成日時：2018年6月19日 4時
