検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:211,359 hit

第五話 小戯曲 ページ7






 その一言で、様子を見るべくクラスメイトは廊下へ出て行く。全員が教室から出ると、僕も外の様子を見るために廊下へ出た。



「・・・これは」


 目の前に広がるのは、崩れ落ちた瓦礫の山が行く先を塞いでいる絶望的な光景。途切れた線が閃光を光らせる度、甲高い悲鳴が上がる。



「―――爆弾だよ」


 困惑して冷静な判断が出来ないでいる最中、先生の冷淡な声が背後から聞こえる。一斉に振り返ると、机の真上に立つ先生がいた。



「・・・先生が爆破させたんですか?」

「ピンポーン!因みにね、その上にもまだあるよ」


 そう言って、先生は嗤うように僕達が居る廊下の真上を指差す。



「誰か、誰か助けて!!」


 突如、冗談だと思っていたことが現実に起こり、恐怖の感情が支配する。一人の生徒が瓦礫の向こうへ助けを求めるが、返事は返って来ない。




「無駄だよ」


 僅かな希望を打砕くかのように、先生はゆっくり手を叩く。



「さあ、教室に戻ろうか。また爆発しないうちに」





「今の爆発で君達は、この教室と隣の美術室。そしてトイレ以外は行けなくなった。完全に退路を断たれたことになる」


 教室へ戻ると、先生は黒板に校内の地図を広げる。それから、赤のチョークを手に持った先生は、先程目にした廊下に斜線を引く。




「え、これドッキリだよね?」


 未だに信じていない子が震えた声で言うと、先生は目を細める。



「勿論、現実(リアル)だ 。この学校には、さっきみたいな爆弾が至る所に仕掛けられている」


 先生が目で負った数は三つ。この教室の真下、反対側の壁。そして、天井。




「分かったら、席に着こうか」


 有無を言わさない威圧感に、皆は席に戻り出す。それを待っている間、先生は外を傍観するように眺める。



「おーー、走ってる走ってる。もう2、3個爆発させないと緊張感でないと思ったけど、結構皆必死に逃げてくれるね」



 ――――ああ。

 これは、先生が執筆した小戯曲(オペレッタ)の序章に過ぎないのだろう。


 登場人物は、僕達3年A組。僕達は、舞台上で動くキャラクター。終曲(フィナーレ)を迎えるまで、踊り続ける。



 皆が携帯を取り出す中、僕はつい笑顔になる。

 狂気に充てられたからか分からないが、音楽を聞いている時と同じように気分が高揚する。この状況をどこか待ち望んでいた自分が居る。



 この人なら―――柊先生なら、澪奈を追い込んだ何かを、そして僕を変えてくれる。


 そんな、気がした。




第六話 回収→←第四話 人質宣告



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (720 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1647人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , 男主 , 柊一颯
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

蒼炎(プロフ) - とても面白いです!主人公と柊先生の絡みが物凄く好きです!続き待ってます!お願いします!! (2021年4月20日 22時) (レス) id: bdaf0ebad8 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。更新楽しみにして待っています! (2020年9月27日 1時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - もう更新しないのでしょうか?是非、待ってます! (2020年9月7日 21時) (レス) id: 62727f5aad (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 物凄く大好きです!これからも頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2019年4月6日 15時) (レス) id: 4cf65d0de3 (このIDを非表示/違反報告)
九重 - じわじわと男主を喰っていく柊先生(精神的に)ドロドロとした独占欲が堪らない!堪らない!ありがとう!ありがとう! (2019年3月28日 23時) (レス) id: b60eca276a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空天 馬 | 作成日時:2019年1月13日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。