第三話 学級委員長の思い ページ5
先生のいない教室は、ざわざわと話し声で溢れていた。だけど、今は違う。普段なら先生が来ても飛び交う声が消え、静まり返っている。
それは、ある一人の生徒が理由だった。
開いたドアの前に立っている、
あの日―――澪奈がいなくなったあの日から、A君が教室に来ることは少なくなった。
誰もが事情を知っている為、誰もA君の行動を咎めない。前よりも増して、生徒も教職員も腫れ物を扱うような状態になっていた。
その、A君が教室に来た。
それは衝撃的で、言葉には言い表せれない愉悦感に浸らせる。
「ほら、席に就け」
一分も経たない内に、先生がA君の後ろから教室に入って来る。閉じられたドアには、いつもなら掛けない鍵を何故か掛けていた。
「ほぉら」
先生に促されると、A君は自分の席に向かう。窓側の、一番後ろの席。窓から差す光に照らされたA君は輝いて見えて、神秘的だ。
カメラに収めたい衝動を抑えていると、ふと視線を感じた。
席に座ったA君が、髪と同じ、色素の薄い黒目を私に向けている。
完全に意識が別の場所に飛んでいた私は、勢い良く前に向き直り、煩く跳ねる心臓を必死に宥める。
「今日は、大切なお知らせがあります」
どうしよう、と焦っていた心も、教室中に響いた先生の声で次第に落ち着いて来る。もう一度、確かめるように振り返ると、A君は先生に視線を向けていた。
きっと、目が合ったのは気のせいだ。
A君は、私達のしていたことを知っているはずだから。教室に来ることが少なくなったのもそのせいだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1646人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼炎(プロフ) - とても面白いです！主人公と柊先生の絡みが物凄く好きです！続き待ってます！お願いします！！ (2021年4月20日 22時) (
レス) id: bdaf0ebad8 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。更新楽しみにして待っています！ (2020年9月27日 1時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - もう更新しないのでしょうか？是非、待ってます！ (2020年9月7日 21時) (レス) id: 62727f5aad (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 物凄く大好きです！これからも頑張ってください！楽しみに待ってます！！ (2019年4月6日 15時) (レス) id: 4cf65d0de3 (このIDを非表示/違反報告)
九重 - じわじわと男主を喰っていく柊先生(精神的に)ドロドロとした独占欲が堪らない！堪らない！ありがとう！ありがとう！ (2019年3月28日 23時) (レス) id: b60eca276a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空天 馬
| 作成日時：2019年1月13日 0時
