検索窓
今日:10 hit、昨日:46 hit、合計:794,671 hit

第十一話 資格の時間 ページ13






「さらに頑張って増えてみました。さあ、授業開始です」


 中間テスト前日。あろうことか、黄色い生物はさらに増えていた。残像交じりの分身は、かなり雑になっているし、心なしか雑念が生じている気がする。




「……流石に相当疲れたみたいだな」


 授業終了の鐘と共に、黄色い生物は教卓に凭れ掛かり息を乱しながら休息を取り始めた。疲れるのも無理もない。一人に何体もの分身を付け、それを27人分。

 岡島はそんな黄色い生物を見て、何でそこまでするのか問う。
 すると、黄色い生物は特徴的な笑い声を上げた。


「ヌルフフフ。全ては君達のテストの点を上げる為です」


 黄色い生物の思い描くビジョン。己によって良い点が取れた生徒達は、尊敬の眼差しを己に向け、評判を小耳に挟んだ女子大生が集ってくる。

 加えて、殺される危険も無くなりWin-Winの関係を築ける。



「……いや、勉強の方はそれなりでいいよな」

「うん。なんたって、暗殺すれば賞金百億だし」


 百億円があれば、成績が悪くても大丈夫、か。何ともまあ素晴らしい絵空事に、眉間に皺が寄ってしまう。



「俺達エンドのE組だぜ、殺せんせー」

「テストなんかより、暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」


 ああ、そうか。
 根元から腐食していたのか。

 本校舎からの扱いを否定しないのも、その待遇を何処かで受け入れ、それが当たり前になっているからだったのか。

 腹の底に湧いた怒りが止まることなく膨らみ始めた、その時―――。



「成る程、よく分かりました」


 黄色い触手が、俺の頭を軽く撫でる。柔らかな感触に気を取られていると、黄色い生物の顔が見る見るうちに×の模様に変わっていった。



「今の君達には、暗殺者の資格がありませんねぇ。全員、校庭に出なさい」


 烏間先生とイリーナ先生も呼んで、と付け足して黄色い生物は俺達に背を向ける。指示通り、教室から全員が出て行くのを見届けると、俺もその後に続いた。








第十二話 第二の刃の時間→←第十話 分身の時間



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (716 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1439人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

(プロフ) - 今更なんですがとてもハマりました。これからも応援しています。 (2021年5月23日 2時) (レス) id: 0cbe8ba716 (このIDを非表示/違反報告)
腐女神だぜ☆(プロフ) - コメ失礼します。主人公がくっそかっけえです。これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2019年8月16日 20時) (レス) id: b63828eb3d (このIDを非表示/違反報告)
浅野月愛(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも天霧くんのカッコいい行動にドキドキさせられています、これからも更新頑張ってください!(急かすつもりとかはないので) (2019年8月15日 11時) (レス) id: e6ca85b3e9 (このIDを非表示/違反報告)
- 続き、楽しみにしています。 (2019年3月31日 22時) (レス) id: 67a2382333 (このIDを非表示/違反報告)
御子柴(プロフ) - 好きです!!!! (2019年2月23日 3時) (レス) id: 5350486dcc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空天 馬 | 作成日時:2019年2月14日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。