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4月の終わり
昼休み
「はいはい、角名くんが1月25日の182.6の70.6で…銀島くんが8月21日の177.9の68.2……」
「雪ちゃん、大変そう…」
ぞろぞろと前の席に座る雪ちゃんのもとに集まる背の高い男の子たち
恐らく全員バレー部
「次の大会用に1年生全員のデータ集めなあかんくてな…人多すぎや、もう1人マネが欲しい」
「大変だねぇ…」
「せや、侑もまだや。どこいった、アイツ」
「侑くんなら購買に走って行ったけど…」
「先に言ってから行けや、使えんヤツやな」
侑くんも雪ちゃんに当たり強いけど、雪ちゃんも侑くんに当たりが強いと思う。
奮闘する雪ちゃんを見守りながらお弁当を食べてると、隣の席に誰かの気配
「雪」
「お、来よった!」
一瞬侑くんが戻ってきたのかと思った。
しかし視界に入ってきたのは見慣れない銀髪
「…でも顔が一緒だ…」
ぽろっとこぼしたその声に反応した銀髪の人
「あ、もしかしてAちゃん?」
「え、あ、はい…」
「あ、そか。お二人さん初めましてやな。
この銀髪がもう一人の幼なじみで侑と双子の治や」
「侑くんって双子だったんだ…」
「顔そっくりやろ、でも治の方がちょこっとだけ侑より大人やで」
「よろしく」
そうフッと笑って挨拶した治くんの顔は侑くんとほぼ同じだったけど、確かにやんちゃさはあまり感じなかった。
「せや、治。侑の身長と体重知らん?」
「そこまでは知らんなぁ」
「じゃあ自分のだけ教えて」
そう言われて、侑くんの席に座りながら自分のデータを教える治くん
言い終えると、こちらを向いた。
「俺、Aちゃんに会いたかったんや」
「え、なんで…」
「だってツムが「おい、サム」なんや、タイミングよく戻ってくるなぁ」
上から降ってきた聞き慣れた声の方に顔を向けると、少し怖い表情をした侑くんが立っていた。
そこどき、と言われてはいはい、と立つ治くん
二人並ぶとほんとにそっくりだと思った。
「限定のトロ入りおにぎり買えた?」
侑くんに走りに行った目当てのものを聞くと、
「おん、買えた」
と、少し不機嫌な様子で返事をした。
「あ、侑、自分の身長体重教えて」
雪ちゃんに聞かれてもぶっきらぼうに答えた侑くん
「すまんな、Aちゃん。じゃあまた」
そう言って去って行った治くんを心なしか侑くんが睨みつけたように感じた。
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作者名:にゃん吉 | 作成日時:2020年2月13日 16時