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「お前、Aちゃんのこと好きやろ」
夜
あれから部活も終えて帰宅した後、二段ベッドでゴロゴロしてると下から聞こえてきたサムの声
「…別に」
図星やったが、すぐ認めるんはなんとなく恥ずかしくて嘘をついた。
「嘘やな、どっからどう見ても好きやもん」
「やかましいな、好きやったら何か問題あるんか」
「1組のやつ、来週告白する言うてたぞ」
「ほんま！？」
バッと起き上がって下を覗くと、マンガを読んどったサム
視線をマンガから外して、こちらを見た。
「嘘や、その反応を待っとった」
「うわ、意地わる」
まんまとサムのカマかけに引っかかってしまった自分にムカつきながら、またドサっとベッドに寝転んだ。
「なんで告白せんの」
「まだやろ、まだそこまでの関係になっとらん」
「そんな悠長にしとってええんか」
「俺だって分かっとるわ。でも、なんか、今までのレンアイとはちゃうねん。自分でもどう攻めてええんか分からんねや」
そんな悠長にはしてられんことは分かっとる。
ノロノロしとったら100パーセント他の男に取られる。
でもまだ出会って一ヶ月も経っとらん。
まだ早いやろ、まだ。
焦りは禁物や。
たぶん。
「ほんま、珍しいな」
「あん？」
「初対面から積極的に話しかけたり、自分から誘ったり、そんな風に悩んだり。なんなら、そんなツムを見るんは初めてちゃうか」
そりゃそうやろ、人生で初めての一目惚れなんやから。
「え、一目惚れしたん」
「なんで…」
「声に出とったで」
「まじか」
めちゃくちゃ恥ずかしいことしたわ。
「まぁでも安心せえ。俺はツムのこと応援しとるで」
「ほんまか？」
「俺がAちゃんのこと好きになると思うて、あんな殺気散らしとったんやろ」
「まぁ」
「もったいないけど、俺はAちゃんにあんま興味あらへんのや」
「まじで！なんでや」
「それは秘密」
その時、ちょうど下から母親の夕食に呼ぶ声がした。
サムのその訳も気になるけど、何より一番の敵がいなくなったことに俺は安心した。
でも、Aとのレンアイ的な距離の詰め方はまだよう分からんくて。
どうしたもんかな、と呟いた声はサムのいなくなった部屋に消えてなくなった。
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作者名：にゃん吉 | 作成日時：2020年2月13日 16時
