第三十一話 ページ33
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「ﾊｯ…ﾊｯ…」
心臓がドクドクする。
少し足を休めないと発作が出そうだ。
タイミング良く信号に引っかかる。
〔ｳｵ、ｱｱｰｰｯ!! これは…応援団以外の歓声も凄いですね。まさに観客を巻き込んでいるというか。 ﾎﾞｸﾄ!!ﾎﾞｸﾄ!!ﾎﾞｸﾄ!! これも強烈っ…！！〕
大きく深呼吸するとイヤホンから聞こえてきた実況の声
携帯の画面を見ると、梟谷のマッチポイントだった。
信号が青になり、一歩、二歩と加速していく。
1月7日
東京・千駄ヶ谷
見えてきた大きなバボちゃんと大きな看板
《全日本バレーボール高等学校選手権大会》
時刻はお昼時
お昼ご飯を食べようと外に出る人、あるいは済ませて戻る人で賑わう広場を抜けて
体育館の中に足を踏み入れた。
「ﾜｱｧｰｰ!!」
ドッと大きく上がる歓声
身体中で感じる熱気
生で感じる春高の舞台に私は興奮した。
「あれ、Aちゃん？？」
会場の余韻に浸っているとかけられた声
その声は記憶に新しかった。
「天満さん！！」
「久しぶり！って程でもないけど、元気にしてた？」
「元気にしてました！」
ニコニコと笑う天満さんの後ろで、不思議な顔をしてこちらを見る人が何人か見えた。
「あ、こちらは俺の大学を志望してる子で…こないだ案内したんですよ」
そんでこちらは烏野の父兄さんたち、と私に紹介してくれた天満さん
ぺこりとお辞儀をすると、向こうも返してくれた。
「で、なんでAちゃんがこっちに？？」
「あ、ずっと生中継見てたんですけど、烏野とか他の高校がすごすぎて…いてもたってもいられなくて来ちゃいました…」
「意外と行動派なのね、Aちゃん」
ケラケラと笑う天満さん
「でも、Aちゃんをそうさせちゃうくらい今年の烏野はすごいんだね」
「すごく、すごいです」
とってもシンプルな言葉だけど、烏野はその一言に尽きると思う。
周りの高校だってすごくないわけじゃない。
でも、本当に、本当に烏野の勢いが止まらない。
日向くんが、飛雄が、止まらない。
それに引っ張られて他のメンバーも止まらない。
こんな良い試合が連発する大会を、
画面越しだけで見るのはもったいないと心の底から思った。
近くで、この目で見て、この身体で感じたいと思った。
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作者名：にゃん吉 | 作成日時：2020年1月21日 23時
