第三十話 ページ32
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「おい影山ー!!羽付き知らないんですか?!!」
日向が怒号を放っているが、全く聞こえない。
「影山くん聞いてますか?!!肉まんが賭かってるんだぞ!!」
それよりもさっき見てしまった光景が頭から離れなかった。
ランニングの途中に見かけた光景
チョコバナナを片手に持つAさんを最初に発見した。
声をかけようか迷った時、一緒に歩いてる人を見て驚いた。
Aさんと牛島さんって、どんな関係なんだろうか…
いや、確かに2人とも同じ学校だし知り合いだということはあり得るだろう。
けど、正月に一緒に出かけるか?
それにAさんが持ってたチョコバナナから考えるに初詣に行ってきたんだろう。
牛島さんはAさんの彼氏なのだろうか。
「影山ぁぁ!!お前のせいで負けたじゃねぇか!お前が肉まん奢れよな!」
「うるせぇ日向ボケ、考え事してんだよ」
「理不尽!!」
牛島さんがAさんの彼氏かもしれない。
そう思うとなぜか、腑に落ちなかった。
クソッ、なんでこんな悶々としなきゃいけねぇんだ。
まぁ、今考えたところでキリがない。
目の前のことだけに集中しよう。
それからチーム替えをして、田中さんとのチームになった。
さっきと全然ちがう!と文句を言う日向をボコボコにしたところで主将が来た。
「オラオラ、休みは休む為にあるんだ!貴重なOFF日に風邪なんかひいたらブッ飛ばすぞ!」
そう怒られて西谷さんが持ってきた羽付きは強制終了された。
家に帰ってベッドに横たわると、さっきの光景がまた蘇ってきた。
「俺、なんでこんなに気になってんだろ」
ボソッと不意に口から出たその言葉は、部屋のなかで静かに消えていった。
気になることは聞いた方がいい。
今度もし会えたらその時に聞こう。
また、自分にそう言い聞かせて3日後から始まる春高に集中する為に
無理やり脳内からあの光景を消そうとした。
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作者名:にゃん吉 | 作成日時:2020年1月21日 23時