第九話 ページ11
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『なにやってるのーー？？』
父親に勧められたバレーボール
やることがなく、なんとなくボールで遊んでいたある日
声をかけてきた子がいた。
『バレーボール……』
『カラフルなボールだね！！かわいい！！』
俺は幼い頃からあまりしゃべらない性格だった。
しかし、その子はこちらのことなどお構いなしに、屈託のない満面な笑みでいろいろと質問してきた。
『そのばれーぼーる？ってどーやるの？？』
『……ぼくもはじめたばっかで…』
『そーなんだっ！わたしもいっしょにやりたい！いい？？』
『いいけど……』
『やったー！！わたし、瀬川A！よろしくね！』
『……牛島若利…よろしく…』
『じゃあ、としくんだね！！』
これがAとの出会いだった。
『Aちゃんもうまいな〜〜』
出会った場所に行けば、必ずAがいた。
あの日からよく一緒にバレーをした。
父親にその話をしてからは三人でバレーをするようになった。
『若利も、Aちゃんも、センスがあるな！！』
父親は2部リーグで活躍したバレーボール選手だった。
『2人とも、強いチームに入るといい。
強くなれる環境には、強い奴や面白い奴が集まる。
そして強くなれば、色んな奴と戦える。
強い奴、
変な奴、
そいつらはきっとお前たちを強くしてくれる。』
『『……』』
『…いやあまあ、お前たちがバレーを続けたいと思ったらの話だけど、どういう形でも
お前たちがバレーを好きになってくれたらうれしい。』
そう、照れ臭そうに父親は言った。
『おじさんのおかげで、もうわたしはバレーボール好きだよ！！』
『お！そうかそうか！そりゃ、うれしい！！』
それから地元で有名なクラブチームにAと一緒に入って練習をした。
俺も、Aも、どんどん上達していった。
出会った場所では、Aがあげるトスを打つようになった。
俺がスパイクを打つたび、嬉しそうにはにかんだAの笑顔。
俺はいつまでもこの笑顔を見ていたいと思った。
しかし、
中学3年のある日、
Aの母親から連絡をもらった母親が言った。
『若利、Aちゃん…入院したって…』
俺がいつまでも見ていたかったAの笑顔は、
この日を境に見なくなっていった。
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作者名：にゃん吉 | 作成日時：2020年1月21日 23時
