Over Love 3

106　side you ページ6

―寝顔、めっちゃ可愛いな

―…隆二、どういう事？







「…そうだったの」


全てが腑に落ちた。

道理で美桜が懐いてた訳だ。



私だけ状況を理解していないみたいで苛立ったのは事実だけど

隆二のお陰で私も父も
もちろん母や妹だって、だいぶ助けられた。


「ありがとね、隆二」
「ん」


ぐっすり眠る美桜を撫でた隆二。

照れ隠しだという事実には
気付かないフリをする事にした。




「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」








　






　









帰り道。


行きとは違い、
懐かしい景色はあっという間に流れていった。


「隆二、ごめんねお店」
「いや？美桜とまた遊べて楽しかったし」


車を出してくれただけではなく
私の家族の事情で店を休ませてしまっ事が心苦しかったけど


「可愛いよなー、美桜！
　天使みたいだよなー！」


すべての表情筋を緩ませている隆二に
私の心は救われた。


「美玲もさ、すっかり母親の顔だな？」
「そりゃそうよ。………あ…」





ふと、思った。





「ねぇ隆二、もしかして知ってたの？」
「ん？何が？」
「……お見合いの話」




一瞬の間と
煙草に伸びたその手。




「いや？知らなかったけど？」

「ふふ、…ウソつき」





どうせ、美玲に口止めでもされたんだろう。



隆二が手にした煙草を横取りして火を点けるフリをしたのは

ウソつき(・・・・)への軽い仕返し、
もしくは
単なるジョークのつもりだった。


だけど。





「…おい」







本域で睨みつけられ、身体が凍る。






「マジでやめろ」

「…ごめん、冗談のつもりだった…」





眉間に皺を寄せたまま
呆れ顔で深い溜め息をついた隆二。

無言で私から煙草を奪い取り
そのままドリンクホルダーに戻した。



前方に戻された視線。



その横顔に

怒りは消えていた。






「…ったく、お前はさ？」






柔らかなその声色に


……肩の力が抜け落ちる。






その手が私の頭にポンと乗った瞬間









思い出した。









　―早く行ったら？行きつけのBAR!




　―誤魔化しても苦しい。
　―壊れても苦しい。

　―だったら

　―進める道を、選べ。









進むべき道の手前で





　―俺はAが好き。Aは、誰が好きなの？

　―私は……





足踏みしていた事を。






　

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