Over Love 3

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「はい、どうぞ菜奈ちゃん」
「うわ…きれい…」


ルビーの様な赤色と弾ける炭酸が層を作り
レモンを添えたロンググラスは
まるでサンセットを切り抜いたように映る。



「なんていうカクテル？」

「カリフォルニアレモネード。
　Aが大事にしてるウイスキー使ったのは
　…内緒ね？菜奈ちゃん」

「ふふっ、了解」


「…聞こえてるけど？」



目を細めながらグラスを眺めている菜奈は、
隆二がこのカクテルを作った意味を知る由もないけど

込められたその思いに

私の胸は熱くなった。



「んーっ！おいしい！」
「ははっ、良かった」



カリフォルニアレモネード。


　
「俺ちょっと出てくるからさ
　奈菜ちゃん、ゆっくりしってって？」

「うん。ご馳走様、隆二君」



カクテル言葉は「永遠の感謝」。





　







　









隆二が部屋を出てすぐだった。


「黒澤課長、明日には出社するって」

「…そう。なら…良かった」


菜奈は気付いていた。


　“そう言えば…”


私が何を言おうとしたのかも

隆二が部屋を出て行った意味も。



「白濱は心配してなかったわよ？」
「えっ」
「小指(・・)が来たから大丈夫だろうって」

「そう…」




何で涙が出るのか分からなかった。


「ふふ、バカねーA」


でも菜奈は、私の涙の理由にも気付いていた。





　黒澤課長が心配で仕方なかったんでしょ？
　大変だったもんね、課長もAも。

　隆二君の事より黒澤課長の事で頭が一杯で
　後ろめたくなっちゃった？

　白濱に付き添ってもらって心打たれちゃって
　罪悪感でも感じた？

　隆二君が好きなのに
　どうした自分、とか？


　バカね、A。


　心配も、心を打たれるのも
　相手が誰であろうと普通の感情よ？


　もし黒澤課長が私だったら？
　もし白濱が私だったら？

　ま、
　隆二君はどこかで嫉妬したかもしれないけど

　Aの事一番理解してるの隆二君だもの。

　Aが背徳感を抱く方が
　隆二君に不実なんじゃないの？


　
　
「…菜奈」


頭の中に駆け巡った14日間。


「どう？正解？」




私には

私以上に私を理解してくれる人が二人も居る。



　―大丈夫？でもない。
　―心配したぞ？でもない。



　“おかえり、A”



「…カリフォルニア、レモネード」

「え？どういう事？」



カクテル言葉は…



「ふふ。…ありがとう、菜奈」

「？？…なんかよく分らないけど、
　どういたしまして？」


　

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