Over Love 3

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目が覚めて
あれは夢だったんだ、と思い

視界に映った見慣れない景色に

記憶が途切れている事に気付いた。






「A、分かる？」


右手はしっかりと握りしめられていて

そこには、
切迫した白濱の顔があった。



「…白濱？」



そして

白濱だと認識したと同時に

直前の記憶が走馬灯のように頭を駆け巡り

あれは夢ではないと思い改める。




　 ―――良平ッッッ！！！




「白濱っ、良平は？」

「大丈夫。過労だって」



「……そう…」



自分が良平と呼んだことにも気づかず
ただただ安堵した私は

途端に視界が滲む程の感情を
死ぬ気で堪えていた。



　―A？どーした？
　―課長っ！黒澤課長ッ！！！



「登坂は？」
「さっき先生と話して、黒沢課長(・・・・)んとこ行ってる」

「……そう」


　“落ち着いたらメシ奢らせてくれよ？”



良かった。

本当に良かった。



安堵のため息が出たのと同時に

今度は
自分自身が点滴で繋がれている事に気付く。



「精神的衝撃が原因の意識障害。
　ショックで気を失ったんだよ」



全ての状況を把握し
やっと酸素を取り込む事が出来た気がした。


　“俺が死んだら、どうする？”




…良かった。

本当に、良かっ「良かった…」



その瞳から零れた涙が、私の手に伝った。



「…白濱」

「へへっ、あー良かった！俺今日残業してて！
　感謝してよね？Aさん(・・)！」



心が、グッと熱くなった。

その手にもう片方の手を重ねようとしたのは
無意識での事。


重なる寸前

静寂な空間にドアをノックする音が響いた。



「はい…」



引き戸の動きに合わせて解放された私の右手が
ひどく侘しく感じていた。



「A」

「…隆二」



立ち上がった白濱は隆二に一礼し

振り返ることなく処置室を後にした。






さっきまで白濱が居たその場所に隆二が腰を降ろし

さっきまで白濱が握っていたように
私の手は包み込まれた。


心臓がドクンと跳ねた理由は分らない。



「臣が連絡くれてさ」



私の手に、唇が触れる。



「おかえり、A」

「…隆二」



大丈夫？でもない。

心配したぞ？でもない。



私の帰る場所はココだ、と
そう言われた気がした。



「…泣くと疲れるぞ？」


嗅ぎなれた香りに包まれながら
その声を、必死に殺す。



不明確な不安も、恐怖も

切なさも、苦しさも


全て包み込まれるこの感覚。



「隆二…」
「ん？」


「…会いたかった」


　

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