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翌朝4時。

翌朝と言っても

隆二が帰って来てから2時間。



ノンアルのモヒートを飲んだあと
一旦はベッドに戻ったものの

丸一日以上眠っていたせいか、全く寝付けなかった。



間接照明だけが灯るリビング。

眼鏡を掛け
真剣な眼差しで
ノートパソコンに向かっていた隆二。


照明が頬に影を作り
余計に彫深く見えた。


眼鏡の横顔も
真剣なその眼差しも。


悔しい程色っぽくて、悔しい程かっこ良くて。




ずっと、眺めていたかった。




私に気付いた隆二が
まさにその灯り様な柔らかな笑みを浮かべた。


「どうした?眠れない?」

「うん…」

「ほら、おいで?」


そう言って、あぐらの足を広げながら
ソファー側に身体を動かした。


テーブルと隆二の間にさっきよりも少し空間ができ

そこにすっぽりと私を納めた隆二は

肩に顎を乗せ
左手で私を抱え込みながら
右手でマウスを動かしていた。




画面に映し出される、数枚の写真。


「見てA。めっちゃ綺麗じゃない?」
「うん、綺麗。……葡萄、畑?」
「当たり」




オレンジと紫色が混ざる夕焼け空に
どこまでも広がる広大な土地。

その中に
古き良き面影のある建物がいくつか点在し

それはまるで

中世の風景をそのまま切り取ったみたいだった。




「フランス?」
「ううん、イタリア」


三千年も前から
ワイン造りがされて来たと言うその場所。


「まだ行った事無いんだよね。
 ワイナリーも幾つかあるみたいでさ…。
 A、いつか一緒に行かない?」

「…うん、そうね」


遠い異国の地に想いを()せる隆二。


戦友との曖昧な約束に

トクンと心が跳ね、ツキッとその奥が痛む。




嬉しさと同居する苦しさ。


そんなの、いつもの事。




でも。

数時間前までは、それが全くなかった。


具合が悪いせいで
余計なことを考える暇がなかったのかもしれないけど


熱も落ち着いた今
またいつもの感覚が戻って来たって事は

きっと私の身体は元気になったんだろうけど


……でも。




「…隆二」
「ん?」



どうせなら

もう少し具合が悪いままでもよかったのに…

なんて言ったら



怒るよね?




「A?」

「………」

「ははっ、めっちゃ可愛いじゃん」






………。






……ばか隆二。








 

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設定タグ:今市隆二 , 三代目 , 登坂広臣   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - ユキさん» まだ観てないんです(><)早く観たいです♪ (2021年1月11日 16時) (レス) id: a234024cbd (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 空さん» 空さんは映画三国志観ましたか岩ちゃんポメラニアンの趙雲役カッコ良かったですけどナルシストな感じでしたね(*>∇<)ノ (2021年1月10日 21時) (レス) id: 5f63e3cc55 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - shireyさん» 怒涛すぎなので今回のターンは纏めて公開しよう!と意気込んでいました^_^;うんうん、本当にいい男です(TT) (2021年1月10日 21時) (レス) id: a234024cbd (このIDを非表示/違反報告)
shirey(プロフ) - 怒涛の展開、、白濱、、いい男だ、(;_;) (2021年1月10日 16時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - kotaさん» モヤモヤさせているかもしれませんが(;^_^Aもう少しで移行です!お付き合い頂けると嬉しいです(^^)/ (2021年1月10日 15時) (レス) id: a234024cbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年7月26日 20時

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