068 ページ18
会場に入るなり
背筋が伸びた白濱。
緊張感を隠し切れないその横顔は
やっぱり
静かに胸を撫で下ろしていた。
後から入って来た人の輪の中に
隆二の姿を見つけた。
いつもよりフォーマルな隆二は
ひいき目じゃなくても群を抜いて眩しく見えた。
会場を見回していた隆二も私に気付き
ニコッと微笑みながらこちに歩み寄る。
「早かったねA」
隣の白濱に会釈をした隆二に
白濱も丁寧に頭を下げていた。
「あ、白濱、こちら…」
“幼馴染”と紹介しようとして
何となく口をつぐんだ。
“…羨ましいな、その幼馴染さん”
「…友人の今市さん。
で、…
“お前のこと抱きしめた
“後輩”
白濱を“後輩”ではなく
一瞬だけ流れた微妙な空気。
お互いが自然過ぎる笑顔で会釈をする中
私の心は穏やかではなかった。
もしかしたら隆二も白濱も
指輪の幼馴染だと
抱きしめた後輩だと
気付いたかもしれない。
「じゃ、あとでなA」
「うん」
ただ、白濱を連れて来た事は
登坂の目論見通り、正解だった。
直ぐにクライアントと打ち解けた白濱は
クライアントを独占する勢いで
会話に花を咲かせて居た。
二人にしか解らない故郷の話を聞く傍ら
ふと見た先で談笑していた隆二。
和装の女性とワイングラスを重ね
随分と親しげな距離で笑い合っていた。
その女性は慣れた手つきで隆二の腕に手を添え
その手は、隆二からしばらく離れなかった。
「……」
その光景に、少なからず気を揉んでいた私。
そんな中、クライアントと白濱の会話が
やっと本題のワインに移り
産地や収穫年の気候などを聞きながら
試飲して廻った。
中でも私が気に入ったのは、フランス産の白。
辛口でふくよかな重みがありつつ
最後に鼻から抜けるフルーティな爽やかさが
絶妙だった。
ハーフボトルのそのワインは
小さな蔵かつ一子相伝で作られている為に
中々出回る事がないらしい。
「野田さん、お目が高いですね」
予想外に誉められた私。
「凄いねAさん。今度俺にもワイン教えてよ」
「教えられるほど詳しくないから」
後輩に面目が立った、なんて
ちょっとだけ先輩風を吹かせていた。
後で隆二にも勧めよう。
そう思いながら
振り向きもしない隆二に微笑みかけた。
580人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空(プロフ) - ユキさん» まだ観てないんです(><)早く観たいです♪ (2021年1月11日 16時) (レス) id: a234024cbd (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 空さん» 空さんは映画三国志観ましたか岩ちゃんポメラニアンの趙雲役カッコ良かったですけどナルシストな感じでしたね(*>∇<)ノ (2021年1月10日 21時) (レス) id: 5f63e3cc55 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - shireyさん» 怒涛すぎなので今回のターンは纏めて公開しよう!と意気込んでいました^_^;うんうん、本当にいい男です(TT) (2021年1月10日 21時) (レス) id: a234024cbd (このIDを非表示/違反報告)
shirey(プロフ) - 怒涛の展開、、白濱、、いい男だ、(;_;) (2021年1月10日 16時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - kotaさん» モヤモヤさせているかもしれませんが(;^_^Aもう少しで移行です!お付き合い頂けると嬉しいです(^^)/ (2021年1月10日 15時) (レス) id: a234024cbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:空 | 作成日時:2020年7月26日 20時