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満足げにほほ笑むその顔に

少しだけ心を撫で下ろす。


その表情が私に平静を取り戻し

同時に
剛典に覆いかぶさっている微妙な体制に

気恥しくなってしまった。



慌てて自分のシートに戻った私は
どこを捉えればいいのか解らない視線を
窓の外に向けた。




「海は、また今度だな」



きっと剛典は気付いている。


私の小さな嫉妬にも、葛藤にも。




そしてそれは

 “…A、キスしてよ”

剛典の中にも
同様の感情が存在しているんじゃないかと

冷静になってやっと気付き
自己嫌悪に襲われた。




――ごめんね――



たったそれだけの言葉を
素直に口に出す事が出来なくて

それでも剛典は愛おしそうに私を見つめていて


「せっかくだから写真撮ろうよ!」


固い表情の自分が、情けなくなった。









 









「晩飯、どうする?」
「…宅飲みにしない?」


一日中運転してくれた剛典に
せめてゆっくりして貰いたいと


「いいね!喉カラっからだわ、俺!
 今日はAの家でもいい?」

「いいけど、何も作れないわよ?」


テイクアウトの料理と酒を調達し
私のマンションに向かった。


車内に立ちこめる良い香りに剛典もご機嫌で

鼻歌交じりのその顔を見ているだけで
気付けば私も楽しくなっていた。





ゆっくりでいいのかもしれない。




そんな風に思った。

そして、そんな風に思わせてくれる剛典に


「ん?」


“ごめんね”を言えなかった代わりに
精一杯素直になって


「…あ、ありがとう」


そう伝えてみた。


「え?何が?」
「なっ…なんでもない」


おどけながらも嬉しそうに
来客用のパーキングスペースに車を止めた剛典。


鞄の中で私の携帯が鳴り出したのは
その時だった。



表示された名前にうろたえてしまった私。
動揺で手元が狂い、着信が途切れた。




剛典の表情が一瞬で曇る。



「………もしかして」



きっと剛典が想像した人ではない。

眉間に皺を寄せた剛典に
私は“違う”と首を振った。

だけど
確実に剛典にとっては好ましくない相手。


妙に早まる脈。
それでも私はその名前を隠すべきではないと判断し

名前を告げた。



「……直人」



剛典の表情は変わらなかった。



「俺、今日は帰るよ」
「えっ…でも」


焦る私。

でも
その心が読めないと感じたのはその瞬間だけだった。



重なった唇。



数時間前
桜の木の下で私がしたように


今度は剛典が

想いを込めたキスをくれた。



 

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設定タグ:岩田剛典 , 三代目 , 登坂広臣   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます!3も、お付き合い頂ければ嬉しいです^^♪ (2020年6月24日 7時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます!! これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです!お手間とらせてすみません^^;移行になります!よかったらまたよろしくお願いします^^ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもww (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年3月8日 16時

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