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午後イチの副社長室。
昼食の流れで上役数人が集まり
経営方針についての“談話”が行われていた。
「A、お茶頼む」
「かしこまりました」
堅苦しさが全くない“談話”の時は
お茶さえ出してしまえば
私は自分の仕事をする事が出来るのはずなのに
その日は珍しく内容が白熱し、
談話の域を超えていた。
社外秘であろうその内容に
パソコンに目を向けながらも聞き耳を立てていた私。
視線を感じてそちらを向けば
剛典が“記録しろ”と目配せをする。
小さく頷き、内容を纏め上げた。
「議事録が必要だったんじゃないのか?」
常務の言葉に
周りはその必要性にようやく気付いていた。
「僭越ながら
西嶋に記録するよう指示してあります」
剛典の言葉を合図に席を立ち上がり
パソコンをモニターに繋いだ。
上役達に布石を投じた剛典。
「素晴らしいよ剛典君。
随分優秀な秘書を連れて来たものだ」
満足げに副社長室を後にする上役達を見送り
すぐに重さを感じた私の背中。
「A、最高。“優秀な秘書”だってよ?」
「
耳元で剛典が微笑んだのが分かった。
「
これだから仕事は面白い。
ぐっと腕に力が入ったのは、
言うならば
契約が成立した時に握手を交わす様なもの。
だけど私は
そこに“心地よさ”と“幸福”を感じていた。
17時。
五十嵐商事での商談に必要な書類を
鞄に入れようとした時
鞄の中のサブバッグに
見覚えのないUSBが入っている事に気付いた。
「これ剛典の?」
「ん?俺のじゃないよ?」
中を確認しようにも時間もないし
新しいUSBを職場のパソコンに差し込むには
管理上の問題で申請が必要だった。
仕方ない。後で確認しよう。
「剛典、そろそろ時間よ?」
「A、ネクタイチェックして?」
「…今日も緊張してるの?」
「“1分”は副社長命令だけど?」
「………仕方ないわね?」
わざわざ上から物を言いながら
私は剛典に抱きしめて貰っていた。
「A?」
「ん?」
「
不意の言葉に、どくんと鳴った心臓。
“みんな羨ましがるんだぜ?Aの事”
“どこにも行くなよ?”
6年半ほど前の広臣と同じセリフ。
心がざわつくのは何故だろう。
“約束は出来ないわ?”
その言葉は、口にしてはいけない気がしていた。
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空(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます!3も、お付き合い頂ければ嬉しいです^^♪ (2020年6月24日 7時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます!! これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです!お手間とらせてすみません^^;移行になります!よかったらまたよろしくお願いします^^ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもww (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空 | 作成日時:2020年3月8日 16時