検索窓
今日:3 hit、昨日:27 hit、合計:208,275 hit

084 ページ34

「ねぇ広臣…」

「ん?」

「隆二君…心配してたんでしょ?」




おそらく隆二君は

広臣に恋人がいる事を知っていて

それが誰なのかも知っていて


だからこそ
私達が揃ってBARを出る事に戸惑っていたのだろう。


「ははっ。どうかな?」


曖昧な肯定は、やっぱり心がチクリと痛んだ。


「A、まだ飲めるよね?」


半歩前を歩くその背中に
“今日はもう遅いから”と言えばいいモノを

ヒールの音は、その歩幅とワンテンポずれながら

それ以上広がる事も縮まる事も無く
鳴り響いていた。





 



「え…ここ?」


広臣に連れられて来たそのBARは
半個室のカップルシート。


“ブルーライトに照らされ優雅に泳ぐクラゲを
 大切な方とご堪能下さい”


「めっちゃ雰囲気良くね?」


大きな水槽の直ぐ前に配置されたテーブル。

肩が触れ合う距離のシート。

無駄に暗い空間は水槽のブルーライトに照らし出され
必要以上に意味ありげに映る。


女の子を落とすには最高であろうこの空間で


元彼と飲めと?




「何飲む?」

「……泡」




差し出されたメニュー表に並ぶ
いかにも女の子が好きそうな可愛らしいカクテルたちを全力で無視し

私はシャンパンを選んだ。



「乾杯」



近い。

無駄に広臣が近い。




変に意識している私をよそに

広臣は目の前の水槽で優雅に泳ぐクラゲを
目を細めて眺めている。


ブルーライトに照らされるその横顔は
やっぱり憎らしいほど艶めいていて

自分を戒めながら
意識的に視線をグラスに移した。



「ここ、来てみたかったんだよね」

「……彼女と来れば良かったのに」



あの夜と同じ。

いや。

確実にあの夜以上に
雰囲気に流されそうになっている私は

わざわざ引っ張り出さなくてもいいワードを使って


「紗希さん、だっけ?」


発したくも無いその名前まで意固地に発して

今夜もまた
自分をコントロールしようとしていた。



私が発したその名前に
広臣は一瞬だけ驚いた顔をして見せたけど

すぐに表情を変え
俯き加減に苦笑い浮かべていた。

心の揺らぎが垣間見え、少しだけ優越感に浸る。



だけど私は、すっかり忘れていた。


「…それは無理」


彼は。

広臣は。


「どういうこと?」


私より歳下(・・)のくせに、私より上手(うわて)だと言う事を。




今度はその瞳が私を捉え

逃げ道を閉ざしながら悪戯に口角を上げる。




「ここでさ、

 岩田と紗希が二人で飲んでたんだよね」


 

085→←083



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (194 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1596人がお気に入り
設定タグ:岩田剛典 , 三代目 , 登坂広臣   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます!3も、お付き合い頂ければ嬉しいです^^♪ (2020年6月24日 7時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます!! これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです!お手間とらせてすみません^^;移行になります!よかったらまたよろしくお願いします^^ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもww (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年3月8日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。