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金曜の夜。
私は剛典さんの自宅にいた。
「どれがいいかな?」
就任パーティーを明後日に控え
スーツ選びに難航していた剛典さん。
見立て役に代われた私は
目の前に並べられたパーティースーツを見て
「剛典さん、これ、サイズ大丈夫ですか?」
「えっ?この前着たけど…」
そう言いながらその中の一着に着替えた彼。
…ほら、ね。
「…やばい、ブカブカ」
“だからってお前が付き合うの?”
「仕方ないでしょ、時間無いんだから」
土曜の朝。
電話口でブツブツ文句を言う直人をあしらいながら
出掛ける準備をしていた。
窓の外に見えた黒のSUV。
「ごめん直人、もう出るから切るね」
慌てて家を出て、その光景に戸惑った。
わざわざ車から降りて私を待っていた剛典さん。
「すみません、お待たせしました」
「私服、雰囲気違うね?」
そう言いながら
当り前の様に助手席のドアを開け、私を促す。
いつもなら、秘書の私か小林さんがするその動作に
なんとも落ち着かない。
「ん?どうしたの?」
「何か…変な感じです」
ドアに手を掛けたまま頭に疑問符を浮かべ
ようやく状況の不自然さに気付いた様子。
「ははっ。どうぞお乗り下さい?Aさん」
執事の様に上半身を折り曲げ片腕をクロスさせた。
恐縮しながら助手席に乗り込んだはいいが
やっぱり落ち着かない。
「今日はさ、敬語なしにしない?」
「…無理です」
「この間はタメ口だったのに?」
「あの時は…勢いです」
「
“随分と薄っぺらい話だと思います”
傷心中と解っていながら暴言を吐いた私に
それでも気遣ってくれるその発言。
「いいでしょ?Aさん」
“逃げたのよ。あなたは…”
あれは剛典さんに向けただけの言葉ではない。
“Aを幸せに出来る人は俺じゃない”
6年前。逃げた自分に言ってやりたい言葉だった。
「…わかった。その代り」
あの日、剛典さんと私が重なって見えていた。
「
一瞬眉を動かした
「りょーかい、A」
私だけアンフェアだと足掻いたその提案は
私より
あっさり肩透かしを食らった。
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空(プロフ) - ユキさん» さらっといい男感出してみましたw続きもよろしくお願いします! (2020年3月9日 12時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ねーやんさん» あははw揺れまくってますよー^^続きもよろしくお願いします! (2020年3月9日 12時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 臣ポメ君(///ω///)♪ (2020年3月9日 11時) (レス) id: 7bd6b3fcc4 (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - 早く私素直になって!6年たったのにヤバい…臣も歳とってるんだから好みも変わってるはず(笑)ギャップで責めても一度恋人同士になれますよーに! (2020年3月9日 11時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - みーやんさん» コメントありがとうございます!!本当に嬉しいです!!そろそろ移行の予定ですがよろしければお付き合いくださいね^^ (2020年3月8日 21時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空 | 作成日時:2020年2月24日 10時