Scramble LOVER -夜半の約束3

107　side you：ジンクス ページ7

「スペイン行ってからも
　帰国してからも
　Aがずっと好きだった。
　傍に居て欲しい。
　俺と、もう一度付き合ってくれないかな」




私にとって広臣は

大切な存在で、尊い存在で、


初めての恋人で、
初めての人で、

苦しさも辛さも
喜びも幸せも

全部広臣に教えて貰った。




別れたのちに再会してからも

変わらずに私を助けてくれて
変わらずに私を支えてくれた。




「広臣…、」
「…うん」



その愛はいつだって真っすぐで
探らなくてもストレートに伝わって来て

その愛に何度も救われて
その愛に何度も包まれて来た。




　“無理して笑うなって”




広臣が与えてくれたほんのりとした温かさは


宿り木の様な
オアシスの様な

そんな温かさ。




「私……、」

「ゆっくりでいいよ」




いつだって紳士的で
いつだってかっこよくて

伝えきれないほどの感謝が沢山あって

伝えきれないほどの感謝で溢れている。




「私……」



言葉を詰らせた私に

その手が伸びた。


導くように、優しく、暖かく。



　“A。臣に幸せにして貰えよ”



この手に導かれれば
きっと私は隆二に言われたように

穏やかに、幸せに過ごせるだろう。




ただ、

広臣が観覧車に乗らないと言った時点で
確信していた。



広臣が重んじた、観覧車のジンクス。



　“広臣、知ってる？
　 この観覧車の頂上でキスしたカップルは
　 幸せになれるって言うジンクスが
　 あるんだって”



広臣はもう気付いている。

私が今日、どんな答えを出すのかを。




「大丈夫。覚悟出来てるから」




確信していたはずなのに、
その言葉は大きな衝撃となって私の心を震わせた。



涙が溢れそうになって
慌てて気を引き締める。


私が泣くなんて許された話ではない。



ありがとう広臣。

本当にありがとう。


でも。





「…ごめんなさい」





　

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